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アイテム
高濃度過酸化水素中で生じる安定ニトロキシルラジカルの消失
https://repo.qst.go.jp/records/72989
https://repo.qst.go.jp/records/72989fb412b69-36e0-43b2-9feb-f95baef824fc
Item type | 会議発表用資料 / Presentation(1) | |||||
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公開日 | 2018-11-05 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 高濃度過酸化水素中で生じる安定ニトロキシルラジカルの消失 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_c94f | |||||
資源タイプ | conference object | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | metadata only access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_14cb | |||||
著者 |
松本, 謙一郎
× 松本, 謙一郎× 中西, 郁夫× 松本 謙一郎× 中西 郁夫 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 【要旨】 安定ニトロキシルラジカル水溶液に放射線を照射するとその常磁性が消失する。この反応はカタラーゼによって一部抑制される。安定ニトロキシルラジカルを含む高濃度(> mM)の過酸化水素水溶液にUVを照射または3価鉄イオンを添加するとニトロキシルラジカル消失が起きたことから、放射線が生成する高濃度過酸化水素がニトロキシルラジカル消失に関与する可能性が示された。 \n【キーワード】過酸化水素、ニトトキシルラジカル、電子常磁性共鳴 \nニトロキシルラジカルは、グルタチオンやNAD(P)Hなどの水素供与体の共存下で一電子酸化されると、水素供与体から水素を受け取り二電子還元されてヒドロキシルアミンとなり常磁性を失う。また水素供与体が共存しない場合でも、ニトロキシルラジカルの水溶液に比較的高線量の放射線を照射すると、ニトロキシルラジカルがその常磁性を失い、電磁常磁性共鳴(EPR)信号の減衰が観察される。この反応はカタラーゼによって一部抑制されることから、反応の一部に過酸化水素(H2O2)の生成が関与していることが示唆されている。しかしながらニトロキシルラジカルはH2O2とは直接反応せず、この反応の詳しいメカニズムはよく解っていない。 代表的なニトロキシルラジカルであるTMEPOLまたはCarbamoyl-PROXYLについて以下の実験を行った。0.1 mMのTMEPOLまたはCarbamoyl-PROXYLの水溶液に、X線を0、16、32、64、あるいは128 Gy照射した後、X-band EPR装置でニトロキシルラジカルのEPRシグナルを測定しラジカル消失量を求めた。0.1 mMのTEMPOLまたはCarbamoyl-PROXYLおよび、0.98、9.8、98、980 mMあるいは9.8MのH2O2を含む水溶液に、128 GyのX線を照射し、ニトロキシルラジカルのEPRシグナルを測定しラジカル消失量を求めた。同様に、0.1 mMのTEMPOLまたはCarbamoyl-PROXYLおよび、0.98 mM~9.8 Mの異なる濃度のH2O2を含む水溶液に、UVB(2 min at 12000 μW/cm2.)を照射して、ニトロキシルラジカルのEPRシグナルを測定しラジカル消失量を求めた。また、0.1 mMのTEMPOLまたはCarbamoyl-PROXYLおよび、0.98 mM~9.8 Mの異なる濃度のH2O2を含む水溶液に、最終濃度で2 mMのK3Fe(CN)6を添加して、ニトロキシルラジカルのEPRシグナルの減衰を観察し、減衰速度を求めた。 ニトロキシルラジカルの水溶液にX線を照射すると、線量に応じてニトロキシルラジカルのEPR信号強度は減少した。線量あたりのラジカル消失量はCarbamoyl-PROXYLよりもTEMPOLのほうが大きく、TEMPOLで0.10 μmol/L/Gy、Carbamoyl-PROXYLでは0.08 μmol/L/Gyであった。0.1 mMのTEMPOLまたはCarbamoyl-PROXYLを、0.98 mM~9.8MのH2O2を含む水溶液に加えても、ニトロキシルラジカルはいずれの場合も30分以上安定に存在した。ニトロキシルラジカルとH2O2を含む水溶液にUVBを照射した場合、9.8 mM以上のH2O2濃度でニトロキシルラジカルの消失が見られた。しかしながらニトロキシルラジカルとH2O2を含む水溶液にX線を照射した場合には、9.8 mM以上のH2O2濃度でニトロキシルラジカルの消失はむしろ抑制された。ニトロキシルラジカルとH2O2を含む水溶液にFe3+を添加した場合、98 mM以上のH2O2濃度でニトロキシルラジカルのEPRシグナルの減衰が観察された。 H2O2を含む水溶液へUVBを照射すると、H2O2が分解されヒドロキシルラジカルを発生させる。ヒドロキシルラジカルはニトロキシルラジカルを一電子酸化してオキソアンモニウムカチオンを生じることができる。ニトロキシルラジカルの水溶液にFe3+のみを添加してもニトロキシルラジカルのEPRシグナル減衰は生じないが、高濃度のH2O2の中ではFe3+の添加でニトロキシルラジカルの減衰が生じる。Fe3+は酸化剤として、ニトロキシルラジカルをオキソアンモニウムカチオンへ一電子酸化させる可能性が考えられ、この時に生じたFe2+はH2O2と反応してヒドロキシルラジカルを生じるので、このヒドロキシルラジカルもニトロキシルラジカルを一電子酸化すると思われる。また、Fe3+がH2O2と直接反応するとは思われないが、Fe3+の一部が光によってFe2+となり、H2O2を還元してヒドロキシルラジカルを生じる可能性がある。Fe2+は還元剤であるがニトロキシルラジカルを直接ヒドロキシルアミンに一電子還元するとは考えにくい。オキソアンモニウムカチオンが高濃度のH2O2中で何らかの反応をし、非常磁性の反応生成物を生じるものと考えている。 放射線は水を電離あるいは励起してヒドロキシルラジカルを生じるが、放射線が生じるヒドロキシルラジカルは放射線の軌跡上に局在しており、mol/Lレベルの極めて密な生成とmmol/Lレベルの比較的疎な生成があることが最近解ってきている。放射線が生じるmol/Lレベルの高濃度のヒドロキシルラジカルの分子間距離は1 nm以下と考えられ、ヒドロキシルラジカル同士の反応を可能にしており、これによって比較的高濃度のH2O2が生じるものと思われる。一方、mmol/Lレベルの比較的疎なヒドロキシルラジカルの生成の場では、ヒドロキシルラジカルよりもむしろ同時に生じた水素ラジカルと溶存酸素の反応で生じるヒドロペルオキシラジカルが主に周囲の物質に対して酸化的に働いていると思われる。しかしヒドロペルオキシラジカルは、H2O2と反応するため、H2O2濃度が高い場合には酸化する標的分子にたどり着く前にキャンセルされるものと思われる。 反応の詳細は依然として不明な点が多いが、酸化性の何らかの生成物あるいは添加物と、そこに共存する高濃度のH2O2が、ニトロキシルラジカルのEPRシグナル減衰を引き起こす反応に関与していると思われる。ニトロキシルラジカル水溶液に放射線を高線量照射した際のニトロキシルラジカルのEPRシグナル減衰についても同様の反応が生じていると予想される。 Abstract Ionizing radiation induced EPR signal loss of a nitorxyl radical in water was partly suppressed by catalase, however the detail mechanism was in progress. A nitroxyl radical in water solutions containing several concentrations (1.0 mM‒9.8 M) of H2O2 were exposed an oxidative stimulation, such as UVB-irradiation or addition of Fe3+. The oxidative stimulation could cause nitorxyl radical reduction in high concentration H2O2 environment. \nKeywords hydrogen peroxide, nitroxyl radical, electron paramagnetic resonance \nRadiation induced EPR signal loss of TEMPOL in water without coexisting hydrogen-donor, such as GSH or NAD(P)H, observed by relatively high dose has been reported. Since this hydrogen-donor-independent reduction of TEMPOL was suppressed by catalase, the generation of hydrogen peroxide (H2O2) is related to this reaction. However, TEMPOL does not react with H2O2 directly. The detail mechanism of the hydrogen-donor-independent reduction of TEMPOL was in progress. A reaction mixture containing 0.1 mM TEMPOL or Carbamoyl-PROXYL and several concentration (1.0 mM‒9.8 M) of H2O2 was prepared, and then time course of X-band EPR signal intensity of the nitorxyl radical at room temperature was measured. A reaction mixture containing 0.1 mM TEMPOL or Carbamoyl-PROXYL and several concentration (1.0 mM‒9.8 M) of H2O2 was irradiated by 128 Gy of X-ray, and the reduction of the EPR signal of the nitorxyl radical was measured. An aliquot (2 µL) of 200 mM K3Fe(CN)6 solution was added to 200 µL of the reaction mixture containing 0.1 mM TEMPOL or Carbamoyl-PROXYL and several concentration (1.0 mM‒9.8 M) of H2O2, and the time course of the EPR signal of the nitorxyl radical was measured. The UV induced EPR signal loss of the nitorxyl radical was slightly increased with H2O2 existing in the reaction mixture H2O2-concentration-dependently. However, the X-ray induced EPR signal loss of the nitorxyl radical was suppressed with H2O2 existing in the reaction mixture. The EPR signal of nitorxyl radicals were decreased in the solution containing quite high concentration (M level) of H2O2, when Fe3+ was added to the reaction mixture. However, in the solution containing lower H2O2 concentration (< mM level), the EPR signal intensity of the nitorxyl radical was stable even when the Fe3+ was added. Oxidative stimulation by UV irradiation or addition of Fe3+ could cause nitorxyl radical reduction in a very high concentration H2O2 environment. |
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会議概要(会議名, 開催地, 会期, 主催者等) | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 第51回酸化反応討論会2018 | |||||
発表年月日 | ||||||
日付 | 2018-11-01 | |||||
日付タイプ | Issued |