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アイテム
細胞の生き死にから見たトラック構造
https://repo.qst.go.jp/records/63174
https://repo.qst.go.jp/records/63174ff6c85bb-2cdb-4255-848b-f0bee5819dbe
Item type | 会議発表用資料 / Presentation(1) | |||||
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公開日 | 2009-08-01 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 細胞の生き死にから見たトラック構造 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_c94f | |||||
資源タイプ | conference object | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | metadata only access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_14cb | |||||
著者 |
平山, 亮一
× 平山, 亮一× 古澤, 佳也× 岡安, 隆一× 平山 亮一× 古澤 佳也× 岡安 隆一 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | はじめに: 放医研では重粒子線の本格的な臨床応用が始まって10年以上経過する。 放射線治療としての重粒子線のメリットは、1)患部に線量を集中し、正常組織には比較的低い線量しか与えないように照射を制御できること、2)酸素増感比(OER)が低く、腫瘍内に存在する低酸素性細胞の放射線抵抗性を克服できること、3)生物学的効果比(RBE)が高く、光子放射線に対し抵抗性を示す腫瘍に対しても治療成績の向上が期待できること、等と言われている。ここでは重粒子線と細胞致死効果の関係を放射線の線質に着目して議論をしたい。 放射線の作用は、放射線のエネルギーがDNAなどの生体高分子に吸収されて傷害が生じる直接作用と生体高分子が直接に放射線のエネルギーを吸収するのではなく、他の分子(例えば水分子)がエネルギーを吸収してから生体高分子に反応して傷害が生じる間接作用とにわけられる。 放射線の生体影響はこれら二つの作用によるものであるが、各々がどのように寄与しているかは興味深い問題である。例えば、水の放射線分解により生じたOHラジカルによる間接作用が細胞致死に占める割合は光子放射線では70-90%程度と報告されている(Ito et al., Radiat.Res. 2006)。 つまり低LET放射線における細胞致死の主要因はOHラジカルによる間接作用であることがわかる。 またLETが400 keV/µmを超えるような高LET放射線でもOHラジカルによる間接作用の細胞致死に占める割合は20-60%程度と報告されている(Chapman et al., Radiat. Environ. Biophys. 1979; Roots et al., Int. J. Radiat. Biol. 1985; Ito et al., Radiat.Res. 2006)。 LETが増加するとともに間接作用の寄与率は減少し、細胞致死の主要因は直接作用となるが、これには放射線の線質が大きく関係しているように思える。 イオントラックを古典的なChatterjeeやKieferのモデルで表現すると、低LETの粒子線は高LETの粒子線に比べ加速エネルギーが非常に高いためイオントラックから派生するδ線の飛程領域(penumbra領域)が非常に広いことがわかる。δ線は低LET成分であるため、重粒子線による間接作用の影響はδ線の飛程領域、つまりpenumbra領域が関係してくる。よって我々は生物試料を用いて重粒子線の間接作用の影響を調べ、重粒子線の線質を調べることを試みた。 \n実験方法と実験材料: 培養細胞の生死を調べるためチャイニーズハムスター肺由来のV79細胞を用いた。 放射線はHIMAC-NIRSから供給された炭素線(290MeV/n)と鉄線(500MeV/n)、RRC-RIKENから供給された鉄線(90MeV/n)を用いた。 LET領域は20 ~ 2106 keV/µmと設定した。 OHラジカルによる間接作用の寄与を調べるため、OHラジカル捕捉剤としてDMSO(dimethylsulfoxide)を選択し、使用濃度は最大1.0 Mとした。 DMSO処理は照射30分前に行い、DMSO存在下で照射を行った。照射後、細胞生存率を調べるためにコロニー形成法を用いて細胞生存率を照射線量毎に求めた。 DMSO添加による放射線からの細胞の保護率(防護率)を求め、DMSO濃度無限大に外挿したときの最大保護率を計算し、各放射線(各LET)でのOHラジカルによる間接作用が細胞致死に占める割合を求めた。 細胞致死における重粒子線の直接作用と間接作用の寄与率の違い、さらに重粒子線の直接作用と間接作用が与える生物効果をX線と比較した。 \n結果: ?重粒子線の細胞致死に対する直接作用と間接作用の寄与率: 炭素線(20 keV/µm)での細胞致死に占める直接作用と間接作用の寄与率は35%:65%であった。 本実験では間接作用はOHラジカルだけを標的とし、直接作用には直接的なエネルギー付与により誘導された細胞致死ならびにOHラジカル以外の他のラジカルや活性酸素種の影響を含んでいる。 鉄線(200 keV/µm)での細胞致死に占める直接作用と間接作用の寄与率は50%:50%であり、さらに高LET鉄線(2106 keV/µm)になると細胞致死に占める直接作用と間接作用の寄与率は68%:32%となり、主作用が直接作用となった。 \n?重粒子線がもたらす高いRBEと直接作用/間接作用の関係: 放射線生物学では線質の異なる放射線が標準放射線に比べてどれだけの効果を示すかを評価することがある。 この効果の違いをRBEとして表し、同じ条件下で同じ生物学的効果を生じさせるのに必要な線量の比と定義される。 RBE = Dx-rays/Dparticle 本実験では標準放射線をX線とし、10%の生存率を得るような線量の比をRBE算出のために選択した。 RBE値はLET増加に伴い上昇し、200 keV/µm付近にピーク(RBE値は約3)を形成した。その後はLET増加に伴いRBE値は減少する傾向を示した。 LET-RBE曲線を直接作用と間接作用別にわけると、直接作用だけで得られるRBEの最大値は約6になった。これは200 keV/µm鉄線の直接作用がもたらす生物効果がX線の直接作用がもたらす生物効果の6倍も高いことを意味する。一方、間接作用に着目するとRBEの最大値は約2程度で、直接作用ほど高い生物効果は得られなかった。 \nまとめ: トラック構造の効果を放射線作用に着目してまとめると、1)LETが増加すると細胞致死における放射線の主作用は間接作用から直接作用に移り、2)高い生物学的効果は直接作用による細胞との相互作用によって現れることが判明した。 |
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会議概要(会議名, 開催地, 会期, 主催者等) | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | 高LET放射線研究会 | |||||
発表年月日 | ||||||
日付 | 2009-07-31 | |||||
日付タイプ | Issued |