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アイテム
がん転移に対する放射線影響研究〜歴史的背景と近況〜
https://repo.qst.go.jp/records/58374
https://repo.qst.go.jp/records/58374264787b2-1721-4429-be6e-30ea7350311d
Item type | 一般雑誌記事 / Article(1) | |||||
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公開日 | 2013-12-12 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | がん転移に対する放射線影響研究〜歴史的背景と近況〜 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | article | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | metadata only access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_14cb | |||||
著者 |
松本, 孔貴
× 松本, 孔貴× 松本 孔貴 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | がんは1981年より日本の死亡要因第1位となり,現在日本人の2人に1人が一生のうちにがんと診断されると推定されている。また,死亡リスクも高く,男性でおおよそ4人に1人,女性でおおよそ6人に1人ががんで死亡すると推定されている(1)。日本におけるがん全体の5年生存率は50%を上回り不治の病との印象はなくなったが,根治までの転移や再発に対する恐れ,疼痛,精神的な孤独感など,患者を悩ませ続ける難病であることに変わりはない。がんは生活習慣病の一つであり,高齢になるに従い発病率が高くなる。日本は2007年に65歳以上の高齢者人口が21.5%となり超高齢社会へ突入し,今後も高齢者の増加に伴うがん患者の増加が懸念される。 近年,がん治療における放射線治療の重要性は増大し、欧米においてはがん患者の約3分の2ががん治療の過程で放射線治療を受けるとされている。日本ではがん患者の約25〜30%が放射線治療の恩恵に与っているとされるが,超高齢社会に突入した今、侵襲性が低い放射線治療への期待とニーズは今後より一層高まることが予想される。 一方で,ここ数十年における放射線治療機器の物理的進歩は目を見張るものがあり、炭素線や陽子線などの粒子線治療やX線を用いた強度変調放射線治療(IMRT:Intensity Modulated Radiation Therapy)や3次元原体放射線治療(3D-CRT:3D Conformation Radiotherapy),画像誘導放射線治療(IGRT:Image Guided Radiotherapy)など,腫瘍への線量集中性がより高い治療法が可能となってきた。これにより,種々のがんに対する局所制御率は向上してきているが,全国的なより一層の普及を行うためには,これら高精度放射線治療を支えるスタッフ(研究、治療医、診療放射線技師、医学物理士など)の育成・確保が急務である。 一方で,がん患者の生存率の向上には,局所制御以上に遠隔転移及び再発の制御が密接に関与する。高精度放射線治療により高い局所制御が得られるようになってきた今日,これら予後を大きく左右する因子の制御こそが克服すべき必須の課題である。表1に転移及び放射線治療に関わる成果のタイムラインをまとめた。転移(metastasis)という言葉がRecamierにより提唱されてから,約200年の時が過ぎ,その間に転移に関わる数多くの研究成果が発表されてきた(2)。Pagetらによる転移の臓器特異性を説明する“Seed and Soil theory”(3)を始めとして,動物を用いた転移モデルの開発(4)やFidlerらの低転移性マウスメラノーマ細胞B16からの選択に代表される種々の高転移性細胞の樹立(5-7)といった転移研究の基礎となる成果が発表された。これらがん転移の概念や実験系の確立が起爆剤となり,転移メカニズムを動物,細胞,分子レベルで解明する研究が急速に発展した。近年では,マイクロアレイ技術を用いた網羅的な遺伝子発現解析によるがん転移の亢進や抑制に関わる遺伝子群の同定(8-9)や,microRNAの制御による転移抑制の可能性を示唆する研究成果(10-12)なども報告されている。このような様々な技術を用いた多角的な数多くの研究成果が得られているにもかかわらず,臨床のがん治療において転移が十分に制御されているとは言い難い(13)。これは外科手術だけでなく放射線治療,化学療法においても同様の課題であり,我々の放射線医学総合研究所で行われている炭素線治療でも,悪性黒色腫,骨肉腫,子宮頸がんのように遠隔転移により優れた局所制御に見合った生存率の向上が得られないことが報告されている(14-15)。本稿では,がん転移と放射線治療の関わりについて,放射線生物学の観点から概説する。まずがん転移の歴史的な背景及びその生物学的な過程について触れ,次いで転移に対する放射線影響について,従来から放射線治療に用いられている光子線に加え炭素線による効果も踏まえて述べる。合わせて,放射線転移影響のメカニズムについて調べた研究成果をまとめる。さらに,最近注目されているがん幹細胞や古くから腫瘍内細胞の性質に大きく影響する事が知られる低酸素領域など微少環境と転移との関係を,最近明らかにされてきた放射線による影響を絡めて述べる。 |
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書誌情報 |
放射線生物研究 巻 46, 号 3, p. 247-270, 発行日 2011-09 |
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ISSN | ||||||
収録物識別子タイプ | ISSN | |||||
収録物識別子 | 0441-747X |