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アイテム
オートファジーはマウス着床前胚の発生に必須である
https://repo.qst.go.jp/records/57728
https://repo.qst.go.jp/records/5772810e7af62-d24a-40c8-9ca7-94d2bbba6814
Item type | 一般雑誌記事 / Article(1) | |||||
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公開日 | 2010-06-30 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | オートファジーはマウス着床前胚の発生に必須である | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | article | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | metadata only access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_14cb | |||||
著者 |
塚本, 智史
× 塚本, 智史× その他× 塚本 智史 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 受精直後の初期胚には、卵子形成の過程で卵子の細胞質に蓄積された母親由来の(母性)mRNAやタンパク質の多くが残っている。しかし、受精卵として最初の転写が活性化される時期を境に母性mRNAやタンパク質の大部分は分解される。実際に、マウスでは2細胞期に受精卵ゲノム由来の転写が活性化し、新規タンパク質の合成パターンも劇的に変化することが知られている。最近になり母性mRNAの分解にはmiRNA (micro RNA)が関与することが明らかになったが1)、母性タンパク質の分解機構は不明であった。 オートファジーはリソソームを分解の場とする細胞質成分の大規模な分解系である2)。オートファジーが誘導されると細胞質の一部がオートファゴソームと呼ばれる二重の膜で隔離され、最終的にリソソーム膜と融合することで隔離された成分が分解される。著者らは、受精後4時間以内にオートファジーが活発に誘導されることを見いだした(図1)3)。排卵しても受精しなかった卵子ではオートファジーは誘導されないことから、受精に依存してオートファジーが活性化していると考えられる。興味深いことに、活発に誘導されたオートファジーは1細胞後期から2細胞中期にかけて全く検出できないレベルにまで抑制される。この時期の細胞質には核膜崩壊によって初期化因子が放出されており4)、これらの因子を保護するためにオートファジーが一時的に抑制されるのかもしれない。2細胞後期以降、再びオートファジーは活性化され4〜8細胞期までは高いレベルで維持されるが、その後は検出できないレベルにまで低下する。 次に著者らは、受精直後のオートファジーの生理機能を解析するために、オートファジーに必須な遺伝子Atg5を卵子特異的に欠損したノックアウトマウスを作製した。以前、著者らが作製した全身型Atg5ノックアウト(Atg5−/−)マウスは出生直後の致死となるため5)、ヘテロ(Atg5+/−)マウス同士を交配させる必要があった。そのため、ヘテロ雌由来の卵子には母性由来のAtg5タンパク質が蓄積しており、このタンパク質の受精卵への持ち込みによって受精直後の表現型がマスクされていると考えられた。実際ごく微量のAtg5でも十分に機能することが明らかとなっている6)。その後の解析から、卵子特異的にAtg5を欠損した雌マウスの卵子ではAtg5が欠損しているにもかかわらず、卵子形成や受精は正常に起こることが分かった。また、野生型マウスに観察された受精直後のオートファジーは完全に抑制されていた。そこで、この雌マウスをヘテロ雄マウスと交配させ産仔の遺伝子型を解析したところ、すべてがAtg5+の精子に由来する産仔であった。同様に、交配後3.5日目に子宮から回収した胚盤胞もすべてがAtg5+の精子と受精したものであった。胚発生をより詳細に検討するため、交配後1.5日目に輸卵管より2細胞期胚を回収して体外培養したところ、オートファジー欠損胚は4〜8細胞期に着床前致死となることが明らかとなった(図2)。一方、Atg5+の精子と受精した場合には、受精卵ゲノムに組み込まれた野生型Atg5遺伝子によってレスキューされると考えられる。実際に著者らは、2細胞期に受精卵ゲノム由来の野生型Atg5の発現を確認しており、この時期のオートファジーの活性化が重要であることを示唆している。オートファジー欠損胚が着床前致死となる原因は定かではないが、一つの仮説としてオートファジーによるタンパク質の分解産物であるアミノ酸供給が胚発生に必須であると考えた。そこで、タンパク質合成率を調べたところ、2細胞期までは正常であったタンパク質合成率が4〜8細胞期にかけて有意に低下することが分かった。翻訳阻害剤であるシクロヘキシミドによってタンパク質合成率を同程度抑制した場合にも胚発生は停止することから、オートファジー欠損胚ではタンパク質合成の低下によって致死となることが示唆される。 以上のことから、受精直後にオートファジーを活性化することで母性タンパク質が分解され、この時期の胚発生に必要なアミノ酸が供給されていると考えられる。一方、受精直後の初期胚には胚発生に影響を与える卵子由来の細胞質因子が残っており、これらの積極的分解にもオートファジーが関与している可能性もあり今後さらなる解析が必要である。 |
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書誌情報 |
細胞工学 巻 27, 号 10, p. 1032-1033, 発行日 2008-09 |
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ISSN | ||||||
収録物識別子タイプ | ISSN | |||||
収録物識別子 | 0287-3796 |