WEKO3
アイテム
(1) 放射線治療プロジェクト
https://repo.qst.go.jp/records/55812
https://repo.qst.go.jp/records/55812fdef51d8-590f-4542-8f48-d32312ff5341
Item type | 一般雑誌記事 / Article(1) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
公開日 | 2012-12-21 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | (1) 放射線治療プロジェクト | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | article | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | metadata only access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_14cb | |||||
著者 |
辻井, 博彦
× 辻井, 博彦× 辻井 博彦 |
|||||
抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | ◆プロジェクトの目的 本プロジェクトは、アジア地域における放射線治療の成績向上と普及を目的としている。アジ ア地域で罹患率の高いがんに対する放射線治療のプロトコール(治療手順)を確立するため、各国で共同臨床研究を行い、副作用や生存率等について追跡調査を実施し、その有効性の科学的立証を進めている。 ◆プロジェクトの概要 − 子宮頸がん − 平成8年度にアジアの人々に適した放射線治療のプロトコールの確立を目指して活動を開始 し、放射線標準療法(CERVIX-?)を確立し、5年生存率が53%と、欧米に勝るとも劣らない治療 成績を示した。 平成12年度に、さらなる治療の改善を目指し開始した加速多分割照射療法(AHF:CERVIX-?) の臨床研究では、5年生存率が66%と、さらに高い治療成績を示した。平成13年度にマレーシア にて開催したワークショップでは、このプロトコールをハンドブックとしてまとめ、各国の参加者等に配布し、成果の普及に努めた。 がんは治療して5年後以降の再発が少ないため、臨床試験では5年の全生存率を算出する必要 がある。化学放射線療法(CRT: CERVIX-?)の臨床研究は本年度までフォローアップを行った結 果、5年の全生存率が55.4%と、国際的に認知された臨床試験報告の成績と比肩できるか、ある いはより優れた成績であり、CERVIX-?のプロトコールがアジアの局所進行子宮頸がん患者に とって安全かつ有効であることが示された。 平成20年度より、重篤な進行子宮頸がんを対象に、抗がん剤同時併用のもと傍大動脈リンパ 領域を含んだ拡大照射野で放射線治療を行う臨床試験(CERVIX-?)を実施している。実施当初に おいては吐き気や下痢等の急性反応が強かったため、平成21年度のワークショップにおいて検 討された改良プロトコールによる治療では、患者の負担が軽減され、抗がん剤投与による化学治療の完遂性が向上した。現時点でのCERVIX-?の有効性は、2年局所制御率が93.8%、2年生存 率が75.6%と良好である。 − 上咽頭がん − 平成17年度から、上咽頭がんも対象疾患とし、上咽頭がんに対する化学放射線療法の臨床試 験を開始した。上咽頭がんに対する化学放射線療法では、近傍リンパ節転移の進行が重篤ながんに対するプロトコール(NPC-?)と、頭蓋底へ腫瘍が直接浸潤する重篤ながんに対するプロトコール(NPC-?)の臨床研究データの解析等を行っている。 NPC-?の登録患者数は121名で、3年生存率は66%、局所制御率は89%である。 NPC-?の平成22年11月時点での登録患者数は70名であり、現在も患者登録を増やすべく、登 録期間を延長している。現時点での有効性は、3年局所制御率が75%、生存率が83%である。NPC- ?の抗がん剤の投与量は他の著名な国際的臨床研究より1割程度少なく、これにより有害な事象の発生が明らかに減り、患者の負担軽減につながっている。また、平成22年度から頸部リンパ節に転移のある上咽頭がん症例に対し、導入化学療法を行った後、放射線療法と化学療法を同 時併用するプロトコール(NPC-?)を開始した。平成22年度までの登録患者数は13名であり、来 年度にもさらに登録患者を募ることにしている。 この他、平成18年度からガラス線量計を用いた外部照射装置の品質保証/品質管理に関する線 量調査を行っており、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの9ヶ国(12施設、36ビーム*1)において、対象施設が申告した照射線量と、我が国のガラス線量計を用いて測定した線量の相違を解析した結果、ほとんどの施設において適切な照射が行われていることが確認された。 ◆プロジェクトの成果 子宮頸がんと上咽頭がんに対する前例がない多国間規模での共同臨床試験を通し、欧米人との 体格差や各国の経済事情等を考慮することにより、安全で副作用が少なく、かつ経済的な治療法を確立しつつある。治療による生存率は、欧米で発表されている他の国際的な臨床試験の成績と同等かそれ以上で推移しており、学術的にも注目を集めている。 本治療法を、参加各国における子宮頸がんと上咽頭がんの標準的治療法とする活動も実を結ん できており、インドネシアでは国の標準プロトコールとして採用する計画であり、タイでは国の標準プロトコールの1つとして確立しつつある。また、フィリピンを始め各国では実質的に広く医療の場でFNCAの化学放射線治療法が受け入れられる等、各国の医療の充実に寄与してる。抗がん剤を併用する化学放射線療法により良好な成績が得られることは、最近の臨床試験データ等により明らかとなっており、参加各国においてはFNCAのプロトコールが国の標準的治療法として採用されつつある。今後も臨床研究を続けることで、さらに大きな成果を生みだすことが期待されている。 |
|||||
書誌情報 |
アジア地域原子力協力に関する調査報告書 / 原子力安全研究協会 巻 平成21年度, p. 3-4, 発行日 2010-03 |