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内容記述 |
X線強磁性共鳴(XFMR)分光法はX線磁気円二色性(XMCD)と強磁性共鳴法を組み合わせた磁気ダイナミクス計測手法である[1]。XFMR分光法ではXMCDをプローブとして、強磁性共鳴状態におけるスピン歳差運動を元素選択的に検出できる。さらに、この元素選択性によって交流スピン流の計測も可能である。我々はこれまで、スピントロニクス材料やスピンフォトニクス材料の解析を目的として、KEKフォトンファクトリーBL-19BにおいてXFMR分光装置を開発してきた[2]。また、より高輝度の軟X線およびテンダーX線を用いたXFMR分光の応用研究を進めるため、3 GeV高輝度放射光施設NanoTerasu BL13Uにおいても装置開発を行っている。NanoTerasu BL13Uは分割型APPLE-IIアンジュレータを光源として備え、180 eVから3000 eVまでの左右円偏光および直線偏光を利用可能なビームラインである[3]。BL13UのフリーポートにXFMR分光装置を接続して実証実験を行った。本装置は真空チャンバー、コプレーナ型導波路(CPW)を備えた試料ステージ、外部磁場印加用ヘルムホルツコイル、X線励起可視発光(XEOL)検出系からなる。放射光マスターオシレータ信号(約0.5 GHz)から高調波を生成し、CPWに導入することで試料にマイクロ波磁場を印加する。CPWシグナル線上のピンホールと試料薄膜を透過したX線が基板に到達するとXEOLを生じる。このXEOLをレンズで集光し、チャンバー外に設置したフォトダイオードで検出することで、試料によるX線吸収量を測定する。本装置の特徴は可視光検出器を容易に交換できる点であり、APD、光電子増倍管、可視光分光器などを実験に応じて利用可能である。試料としてMgO(001)基板上に成膜したNi80Fe20/FeCo二層膜を用いた。3.5 GHzのマイクロ波磁場を印加してNi80Fe20を強磁性共鳴状態にし、NiとCoの各L3吸収端でXFMR測定(ディレイスキャン)を行った。その結果NiとCoいずれのL3吸収端においても正弦波状のXFMR信号が検出された。これによりNi80Fe20の強磁性共鳴とそれに伴ってFeCoに誘起されたスピン歳差運動の観測に成功した。本研究は防衛装備庁安全保障技術研究推進制度(Grant No. JPJ004596)、村田学術振興・教育財団の支援のもと実施した。放射光実験は高輝度光科学研究センター(JASRI)の承認のもと3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu BL13Uで実施した(課題番号:2025A9018, 2025B9007)。[1] C. Klewe et al., Synchrotron Radiat. News 33, 12 (2020).[2] T. Ueno et al., In preparation.[3] Y. Ohtsubo et al., J. Phys.: Conf. Ser. 3010, 012079 (2025). |