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内容記述 |
目的:抗酸化物質は、ラジカル性活性酸素種に水素原子を供与することで、これらのラジカルを消去することが知られている。その水素移動反応には、一段階で水素原子が移動するhydrogen atom transfer (HAT)機構や、電子移動とプロトン移動が段階的に進行するelectron transfer followed by proton transfer (ET-PT)またはproton-coupled electron transfer (PCET)機構が知られている。これらの反応経路は、溶媒などの反応環境の影響を受けることが示されている。1) 本研究では、活性酸素種のモデルとして2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカルを用い、アセトニトリル(MeCN)中での抗酸化物質との反応に対し、水(H2O)および重水(D2O)がどのような影響を及ぼすかを速度論的に検討した。方法:反応はAgilent 8453フォトダイオードアレイ紫外可視分光光度計およびユニソクRSP-1000-02NM型ストップトフロー分光測定装置を用いて追跡した。結果および考察:MeCN中25 ℃において、水溶性ビタミンE類縁体であるTroloxとDPPHラジカルをストップトフロー法で反応させ、DPPHラジカル由来の519 nmの吸収減衰から二次反応速度kを1.8 × 10^2^ M^-1^ s^-1^と決定した。10% (v/v)のH2Oを添加すると、k値は2.7 × 10^2^ M^-1^ s^-1^に増大した。一方、10% (v/v)のD2Oを添加すると、k値は7.4 × 10 M^-1^ s^-1^に低下した。(+)-カテキンとDPPHラジカルとの反応では、10%H2Oの添加時にk値は1.7 × 10 M^-1^ s^-1^から1.8 × 10^2^ M^-1^ s^-1^に増大し、10%D2Oの添加時には1.7 × 10^3^ M^-1^ s^-1^とさらに増大した。本研究では、抗酸化物質としてアスコルビン酸誘導体やコーヒー酸についても同様の検討を行い、さらにH2O/D2Oの代わりに酢酸および重酢酸を添加した反応系についても速度論的影響を比較した。これらの結果を併せて報告する。1) Nakanishi I., Shoji Y., Ohkubo K., Fukuhara K., Ozawa T., Matsumoto K., Fukuzumi S. J. Clin. Biochem. Nutr., 68, 116 (2021). |