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内容記述 |
Iron sulfur cluster assembly homolog 1(ISCA1)タンパク質は鉄硫黄クラスターの生合成に関わるタンパク質であり、磁場情報を受容しうるタンパク質の一種として、中国のグループによって報告された(Xie et al., Nature Materials 2016)。この報告にはさまざまな議論があるものの、それらとは独立して磁場によってISCA1のオリゴマー形成が促進されることがハトにおいて確認された(Arai et al., Protein Sci., 2022)。鉄硫黄クラスターは、このISCA1のオリゴマー化を補助する架橋分子として機能しうると考えられる。一方、近年の研究では、ISCA1には鉄硫黄クラスターだけでなく、単核鉄も結合していることが報告されている(Zhou et al., Zoological Research, 2023)。そこで本研究では、単核鉄の機能や結合状態などを調べるために、鉄硫黄クラスターを排除して単核鉄のみ結合したハトおよびヒト由来のISCA1(単核鉄結合型ISCA1)を用いてX線小角散乱(SAXS)および電子スピン共鳴(EPR)による解析を実施した。SAXS解析では、ハト由来ISCA1は磁場印加によりオリゴマー化が進行するが、ヒト由来ISCA1は磁場印加直後に一旦解離してから徐々にオリゴマー化が進行することが明らかになった。EPR測定では、ハト・ヒト由来ISCA1ともに、単核鉄に由来するg = 4.3の信号が観測された。さらに、g = 4.36と4.10にピークを示す別の信号も観測されたことから、ISCA1は少なくとも2種類の単核鉄結合部位を有することが示唆された。ハト由来ISCA1では2種類の単核鉄が観測されたが、ヒト由来ISCA1ではg = 4.36、4.10の信号に比べてg = 4.3の信号が著しく弱かった。さらに、ハト・ヒト由来ISCA1の単核鉄のEPR信号はどちらも濃度に比例せず、濃度上昇に伴い相対的に減少した。この結果は、ISCA1のプロトマーの間に単核鉄が位置し、単核鉄同士の磁気的な相互作用、あるいは単核鉄の価数変化によってEPR信号が消失した可能性を示している。以上の結果から、ISCA1の磁場依存的なオリゴマー化は単核鉄が結合していれば鉄硫黄クラスター非存在下でも生じうることがわかった。さらに、ISCA1の種特異的な磁場応答性は、単核鉄の結合サイトの違いや電子状態と関連している可能性が示唆された。 |