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内容記述 |
ストロンチウム (Sr) は土壌や河川水,海水中など天然に豊富に存在する元素であり,天然試料の蛍光 X 線 (X-ray fluorescence: XRF) 分析においても容易に検出される.このため,ウラン (U) のXRF 分析の際に,U Lα 線 (13.6 keV) とともに天然の Sr に由来する Sr Kα 線 (14.2 keV) が現れることがある.この場合,それぞれのエネルギーが十分離れているため妨害を受けない.しかし,試料中の Sr 量が多くなると,Sr Kα 線ピーク強度が増大するのに伴い,ピークの低エネルギー側に裾を引くような形状のサテライト構造が現れ,これが U Lα 線ピーク強度の過大評価を招く.本研究では,Sr Kα 線ピークのサテライト構造を考慮したピークフィッティング関数を構築し,多量の Sr 共存下でも U の定量を可能にした.Sr を含む U 汚染水の XRF 分析を想定して,Sr 標準液 (富士フイルム和光純薬) と U 含有多元素標準液 XSTC-4470 (SPEX CertiPrep Inc.) をろ紙に滴下し,Sr 含有量 2, 4, 6, 8, 10, 12 μg,U 含有量 0 ng または 200 ng の試料を作製し,可搬型 XRF 分析装置 MESA-50 (堀場製作所) を用いて XRFスペクトルの計測を行った.Sr 12 μg のみを含有する試料の XRF スペクトルを図 1 に示す.XRF測定で得られた実測値 (図中 raw) を見ると,Sr Kα 線ピーク (14.2 keV) の低エネルギー側に裾を引く形状のサテライト構造が認められ,U Lα 線 (13.6 keV) の分析を妨害することが分かる.サテライト構造の主要因は,放射性オージェ効果 (Radiative Auger Effect: RAE) [1]と考えられる.Sr Kα線は 1s 空孔に 2p 電子が遷移する際に放出される特性 X 線だが,その際,別の軌道電子が放出される shake-off 過程が起きることがあり,この場合,その分だけエネルギーロスした X 線が放出される.RAE は主ピークの1%以下の強度かつ,ピーク幅が広いことがほとんどであり [2],これが裾のような構造を形成する.この RAE ピークの処理について,幅の広いガウス関数に近似してフィッティングをする手法が提案されている [3].本研究では,この手法を基に, Sr Kα 線ピーク強度に連動したパラメータを含むガウス関数で RAE ピークを表現した.これにより,RAE ピークに影響されることなく,正確なU Lα 線ピーク強度を得ることができた.講演では,フィッティング方法と,実際に Srと U を含む試料の分析に適用した結果の詳細を報告する.本研究は原子力規制研究技術基盤構築事業費補助金(原子力規制研究の強化に向けた技術基盤構築事業)に基づいて行われた.参考文献1. T. Aberg, in Atomic inner-shell processes, vol. 1, ed., B. Crasemann (Academic Press, New York, 1975) p. 353 2. 前田邦子 et. al., X 線分析の進歩 25 (1993) 253. Y. Watanabe et. al., Nucl. Instrum. Methods Phys. Res, Sect. B 17 (1986) 81 |