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内容記述 |
特性X 線放出の原因となる内殻電子空孔状態の成因には様々なものがある。たとえば、X 線管では加速された電子がアノードに衝突することでアノード構成原子の内殻空孔状態が生成され、特性X 線が放出される。X 線の入射により内殻空孔状態が生成されて放出される特性X 線には、蛍光X 線という特別な呼び名が付されている。内殻空孔状態は、原子核の壊変でも生じることがある。たとえば239Pu はα 壊変により235U の核励起状態となるが、その脱励起過程において軌道電子を放出することがある (内部転換)。この過程により放出される特性X 線には特別な名前は付されていないが、我々はこれを「自発特性X 線」と呼んでいる [1]。蛍光X 線スペクトルにおいて、U とPu のピークは十分に離れているので同時分析が可能だが [2]、Sr が共存していると、SrのピークがPu のピークと重なるためPu の分析が困難になる。そこで、U はX 線を照射して発せられる蛍光X 線を観測することで、Pu はX 線を照射せずにシリコンドリフト検出器 (SDD) で自発特性X 線を観測することで、それぞれ定量する手法を開発した。ろ紙小片にU 含有多元素標準溶液XSTC-4470 (Spex CertiPrep Inc.)と、これまでの研究でも用いてきた硝酸Pu 溶液 (微量の241Am を含む) [2]を滴下した試料を12 個作製し、このうち6 個にはSr 標準液 (富士フイルム和光純薬) を滴下した。試料に含まれる各元素の質量と放射能は、U: 200ng, ~0 Bq、Pu: 200 ng, 496 Bq、Am: 0.22 ng, 27.7 Bq、Sr: 0 または400 ng、ともに0 Bq である。試料はマイラ膜とポリプロピレン製片側粘着テープで密封した。蛍光X 線計測には可搬型蛍光X線分析装置MESA-50 (堀場製作所) を、自発特性X 線計測にはSDD モジュールXSDD-50 (テクノエーピー) を用いた。測定された蛍光X 線スペクトル (Fig. 1) では、400 ng Sr 存在下でPu のピークが埋もれてしまっているが、自発特性X 線スペクトル (Fig. 2) では、Sr の影響を受けずにPu由来のU Lα 線が観測されている。発表では、その詳細な解析結果について報告する。本研究は原子力規制研究技術基盤構築事業費補助金(原子力規制研究の強化に向けた技術基盤構築事業)に基づいて行われた。参考文献1. H Yoshii et al.,Talanta 286 (2025) 127531.2. Y Izumoto et al., J. Radiol. Prot. 40 (2020) 692-703. |