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内容記述 |
モノアシルグリセロールリパーゼ (MAGL) は、セリンプロテアーゼファミリーに属しており、神経調節因子として働くエンドカンナビノイドの1つである2-アラキドノイルグリセロール (2-AG) の加水分解酵素として知られている。MAGLの基質結合部位には「触媒三残基」と呼ばれるSer122、His269およびAsp239が配置しており、基質である2-AGはSer122と共有結合した後、加水分解されアラキドン酸へと変換される[1], [2]。また、MAGLは様々な神経疾患に関わる重要な酵素であることから、JZL184[3]など様々なアンタゴニストが開発されており、X線結晶構造解析により、様々なリガンドが結合したMAGLの立体構造が得られている。一方、我々のグループでは放射性同位元素 (RI) を用いた標識化合物を精力的に開発しており、がんの診断や脳機能解析などを目的とした陽電子断層撮像法 (Positron Emission Tomography:PET) イメージングに資する研究を行っている。中でも、我々は、MAGLを標的としたPETプローブとして11C標識アゼチジンおよびピペリジンカルバメートを開発してきた[4], [5]。詳細な評価を行う中で、ピペリジン骨格を有する11C標識カルバメートは、投与後脳内に放射能集積が保持されていたが、アゼチジン骨格を有する11C標識カルバメートは、脳からの予期せぬクリアランスを示した。この結果は、11C標識アゼチジンカルバメートがMAGLのSer122と共有結合した後、加水分解されることにより、11CO2が発生し、それが脳から排出されていることを示唆した。本研究では、アゼチジン骨格を有する化合物1 (IC50:0.2 nM, Figure 1A) とピぺリジン骨格を有する化合物2 (IC50:2.0 nM, Figure 1B) を設計し、これらの化合物とMAGLの分子間相互作用を確かめるために、化合物1および2をドッキングさせたMAGL-リガンド複合体に対する水溶媒中での分子動力学 (MD) シミュレーションを行った。また、MAGLは弱酸性下では、酵素活性が失われることから、これら化合物とMAGLの分子間相互作用の解析も行った。 |