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内容記述 |
【目的】抗酸化剤は、物質の劣化要因となるフリーラジカルを消去するため、化粧品や潤滑油などで使用されている。しかし、抗酸化剤の反応性に関する素反応過程に基づく反応機構解明は少ない。我々は、レーザーと同期した時間分解(TR-)ESR法とPulsed-ESR法を用い、ラジカル反応の素反応観測データによる中間体同定や速度定数決定を行ってきた。本研究では、これらの方法を抗酸化剤の一種であるα-tocopherolに適用し、その反応性評価を目的とする。【方法】α-tocopherol(東京化成)は、入手したまま用いた。ラジカル源には、光分解において高い収率でラジカルが生成する1-hydroxycyclohexyl phenyl ketone (IRG184)を用いた。溶媒には、2-propanolを用いた。これらを試料溶液とし、室温下(293 K)でArガスバブリングにより溶存酸素を除去した後に測定を行った。ESR測定では、X-band ESR分光器(Bruker)と半導体レーザー(355 nm)を用いた。【結果と考察】はじめに、IRG184の光分解に対するTR-ESR観測から超微細分裂を調べ、Hy-CyHの発生を確認した。この系にα-tocopherolを加え、反応によるスペクトルの変化を観測した。次に、Pulsed-ESRよりHy-CyHの電子スピンエコー信号を観測した。α-Tocopherol濃度に対してエコー減衰速度をStern-Volmerプロットし、直線解析から、2-propanol中でのHy-CyHとα-tocopherolの反応速度定数を6 × 10^6 M-1 s-1程度と決定した。これは、トルエン中での反応速度定数[1]と比較すると、10倍以上遅いことがわかった。要因の一つとして、α-tocopherolのOH基と溶媒が水素結合し、ラジカルによるOH水素の引き抜きが起こりにくいことが考えられる。[1] H. Hirano, A. Nagata, K. Marumo, H. Takahashi, I. Nakanishi, and A. Kawai, J. Chem. Phys. 2025, 162, 124707. |