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内容記述 |
抗酸化物質によるラジカル消去反応では水素移動反応を伴うため、トンネル効果が関与している可能性があり、量子生命科学的に極めて興味深い。しかし、トンネル効果が観測される反応環境については不明な点が多く残されている。我々は以前、水溶性抗酸化物質Troloxのリン酸緩衝液(0.05 M, pHまたはpD 7.0)中におけるラジカル消去反応において、大きな速度論的同位体効果(kinetic isotope effect, KIE)が観測され、トンネル効果が関与している可能性を報告した[1]。本研究では、種々の抗酸化物質によるラジカル消去反応におけるKIEに対する溶媒の影響について検討した。メタノール(MeOH)中、25 ℃で、TroloxとDPPHラジカルとの反応をストップトフロー法で追跡し、二次反応速度定数(kH)を2.8 × 10(2) M(-1) s(-1)と決定した。MeOHの代わりにメタノール-d (MeOD)を用いると、TroloxのOH基はOD基に変わり、二次反応速度定数(kD)は顕著に小さくなった(6.3 × 10 M(-1) s(-1))。KIE (kH/kD)は4.4となり、MeOH中ではトンネル効果が関与していないことが示唆された。一方、抗酸化物質としてアスコルビン酸や(+)-カテキン、コーヒー酸を用いた場合には、kD値がkH値より顕著に大きくなり、逆KIEが観測された。これは、抗酸化物質の脱プロトン化平衡が関与している可能性があるが、詳細な反応機構については現在検討中である。種々のpHまたはpDのリン酸緩衝液中やアセトニトリル中でも同様の検討を行ったので併せて報告する。1. Nakanishi, I.; Shoji, Y.; Ohkubo, K.; Fukuzumi, S. Antioxidants 2021, 10, 1966. |