@misc{oai:repo.qst.go.jp:00085478, author = {盛武, 敬 and Takashi, Moritake}, month = {May}, note = {電離放射線の生体への影響は、影響がどこ(誰)に及ぶかという観点から、影響が本人だけに限定される身体的影響と、本人ではなく子孫にみられる遺伝的影響に大別することができる。身体的影響には、早期に起こる一過性の紅斑や脱毛を含む皮膚障害、急性放射線症、骨髄抑制、消化管障害、晩期に起こる眼球水晶体の混濁(白内障)、がん・白血病などがある。遺伝的影響には様々な遺伝性障害が想定されるが、これまでヒトで証明されたものはない。またこれとは別に、放射線の線量と影響発生頻度の関係からは、しきい線量のない確率的影響と、しきい線量のある組織反応(確定的影響)に大別できる。防護の観点から、確率的影響を低減するためには、被ばく線量を「合理的に達成可能な限り(ALARA)」低く抑えるべきであり、いっぽう組織反応を回避するためには、被ばく線量をしきい線量以下に抑えれば良いことになる。放射線防護に係る線量限度は、これらの生体影響を及ぼす線量値を勘案して決定されている。 広島・長崎の原爆被爆者らの調査を含む長年の疫学研究をもとに、国際放射線防護委員会(ICRP)は「組織反応に関する声明(ソウル声明、2011.4)」において、これまでの多分割・遷延被ばくの放射線白内障に対するしきい線量>8 Sv (Gy) を0.5 Gy に引き下げ、職業被ばくでの水晶体の等価線量限度については、「定められた5 年間の平均で20 mSv/年、かついずれの1年においても50 mSvを超えない」という、従前の150 mSv/年からの大幅な引き下げを勧告した。これを受けて、国内では放射線審議会(原子力規制委員会)が新たな水晶体の等価線量限度の取り入れを検討する方針を示し、「眼の水晶体の放射線防護検討部会」を設置(2017.7)して議論を進め、『新たな水晶体等価線量限度を取り入れることが適当である』とする「眼の水晶体に係る放射線防護の在り方について」報告書を取りまとめた(2018.2)。放射線審議会はこの取りまとめを受け、関係する各行政機関に意見具申を行い(2018.3)、リスク管理機関としての厚生労働省では、電離放射線障害防止規則(電離則)の改正を検討するために「目の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」を立ち上げた(2018.12)。 この検討会ではエビデンスに基づく建設的な議論が重ねられ、最終的に「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」報告書を取りまとめ(2019.9)、これにより新たな水晶体等価線量限度を取り込んだ改正電離則は、2021年(令和3年)4月1日から施行されることとなった。特筆すべきは、この「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」報告書の中で、「国は、水晶体への被ばく線量が高い業務を行う事業者が、労働安全衛生マネジメントシステム等の取組を着実に進め、安全衛生管理体制を確立するための支援を行うことが望ましい」とされ、改正電離則が着実に実行されるための具体的な管理方策として、マネジメントシステムが明示された点であろう。 本講演では、とくに病院の産業医や産業看護師らが、自施設の安全衛生管理体制を築く上での参考になるよう、医療現場で問題となる「線量限度超え」のリスクについて、実際のデータを示しその効果的な対処法について解説する。また、マネジメントシステムを稼働するのに先立ち、医療従事者が個人線量計を未装着のまま放射線業務を行っている問題が浮上しているため、この現状と対策についても併せて考えてみたい。, 第94回日本産業衛生学会}, title = {電離放射線被ばくによる生体影響〜電離則改正の概要と対応のポイント〜}, year = {2021} }