@misc{oai:repo.qst.go.jp:00085346, author = {鈴木, 碧海 and 大塚, 将太郎 and 横谷, 明徳 and Ami, Suzuki and Akinari, Yokoya}, month = {Jul}, note = {外部環境からのストレスを受けた多細胞生物の細胞は、周囲の細胞や細胞外液からのシグナルを伝搬・受容する仕組みを備えている。例えば、細胞にあらかじめ低線量放射線を照射した後、高線量の放射線を照射すると、事前照射を行わなかった場合と比較して放射線影響が緩和されることが知られており、一般に放射線適応応答と呼ばれている。放射線適応応答では、IP3やCaMが関与する複雑なCa2+放出反応ネットワークが形成されており、脳・神経細胞で細胞内カルシウムストアである小胞体によるフィードバック経路を介した時空間的な振動構造が知られている。 情報伝達物質の周期的な放出と受容による信号伝達を行う細胞集団は、外力に対して頑強性(ロバストネス)を持つ非線形振動子として振る舞うと推測される。外部刺激を受けた細胞集団におけるシグナル伝達物質の時空間的な濃度変化(疎密波)を、生細胞のタイムラプス撮影(in vivo)と生態学数理モデルを応用した解析(in silico)の二点から検討した。 Ca2+濃度変化のライブセルイメージング法の検討として、ヒト正常繊維芽細胞(BJ-1 h-TERT)に対してCa2+に特異的な化学的蛍光プローブ(Fluo 4-AM)を導入し、蛍光顕微鏡を用いて細胞全体の輝度の時系列変化を約5分間撮影した(下図)。タイムラプス撮影の結果から、細胞内の相対的なCa2+濃度変化を算出した。数理モデル解析では、細胞内のCa2+波におけるCaM、IP3R、IP3によるネガティブフィードバックに着目し、生態学における生物の捕食-被食関係を表す数理モデルとして知られるロトカ・ヴォルテラ非線形連立微分方程式をCa2+濃度振動の解析に応用した。本実験ではまずCa2+濃度振動による情報伝達ネットワークを簡略化し、小胞体のCa2+放出に伴うCaM濃度の減少と、外部刺激によるCa2+の一過性上昇を考慮したモデルを作成した。 ライブセル観察の結果より、細胞に観察時の励起光の照射効果が見られた他、隣接する細胞群の中には、Ca2+濃度変化のピーク強度や半値幅に細胞間の距離との相関があることが推測でき、これらの値が情報伝達の閾値として機能している可能性があると考えられる。情報伝達の起点となる細胞からの距離に比例/反比例して疎密波の波形が変化すると推測される。また、ロトカ・ヴォルテラ方程式を基盤とした細胞内Ca2+濃度振動のモデル化により、Ca2+濃度振動の定性的な再現を行うことができた。 今後は細胞にX線を照射した場合の細胞内Ca2+濃度変化を算出し、非照射群との比較・検討を行う。また、マイクロビームで細胞の部分照射を行い、細胞内外のCa疎密波による情報伝達過程の理解を目指す。数理モデル解析については、現状のモデルを改良することでより複雑な細胞内カルシウム動態のモデルを構築し、さらには細胞間のCaシグナル伝達に関するモデルを構築することで、ライブセル実験によって得られた結果との比較検討が将来期待できる。, 第58回アイソトープ・放射線研究発表会}, title = {放射線ストレスによる細胞内Ca2+濃度変化のライブセルイメージング法の検討}, year = {2021} }