@misc{oai:repo.qst.go.jp:00081423, author = {伊原, 智一 and 野口, 実穂 and 岡部, 弘基 and 横谷, 明徳 and Ihara, Tomokazu and Noguchi, Miho and Yokoya, Akinari}, month = {Dec}, note = {細胞周期が永続的に停止した状態の細胞を老化細胞と呼ぶ。通常、細胞の老化という現象はDNA複製に伴うテロメアの短縮が原因となって生じるが、酸化ストレスやDNA損傷によっても生じることが知られている。また、老化細胞は生理活性物質を細胞外へ放出することで周囲の細胞へがん化や老化を促進するなど、正常な細胞では見られない特徴をいくつか持つことから、その細胞内の環境は正常な細胞の環境とは異なると考えられる。このような環境の一つとして細胞の温度が挙げられる。なぜなら、細胞の温度は内部で起こる反応の影響を受けて変動すると考えられるためである。例えば、生体の反応においてATPの加水分解に共役する反応における余剰エネルギーの一部は熱として解放されることで、細胞温度を定常的に制御している可能性がある。そこで本研究では老化細胞と正常な細胞の温度を比較することで、細胞老化現象に特有の生体反応と細胞内温度に相関があるかどうかを明らかにすることを目的とした。 不死化した正常ヒト線維芽細胞にX線を20 Gy照射し、照射後に8日培養することで細胞老化を誘導し細胞内の温度を測定した。温度の測定は細胞に導入した蛍光温度化学プローブ、Cellular thermoprobe for fluorescence ratio(フナコシ株式会社)、により緑と赤の蛍光強度比のライブセル観察により行った。その結果、老化を誘導した細胞の温度は正常な細胞よりも平均して4℃程度高いことが見いだされた。これは、老化細胞では正常な細胞と比べて発熱反応が増加していることを示している。次に、ルシフェリン・ルシフェラーゼ法を利用して老化細胞内のATP量の測定を行った。その結果、1細胞辺りのATP量は照射後2日目に上昇し、以降6日目まで培養日数に伴って減少したが、8日目に再びATP量の増加が見られた。このことから、細胞の老化の誘導のためにはATPが多く消費されるが、老化した8日目以降にはATPの消費量自体が減少することが考えられる。このATP消費量の減少は、老化細胞における細胞周期停止に伴い、それに関係する反応が減少したことが原因であると考えられる。以上の結果より、老化細胞温度を上昇させるメカニズムとしてATP消費を伴う通常の生理反応とは直接相関しない、ミトコンドリアの脱共役反応[1]などが推測される。 [1]Bratic I & Trifunovic A, Biochim. Biophys. Acta, 1797, 961-967 (2010), 量子生命科学会 第2回大会}, title = {放射線で誘導される細胞老化は細胞内温度を上げるか?}, year = {2020} }