@misc{oai:repo.qst.go.jp:00070956, author = {松本, 謙一郎 and 上野, 恵美 and 中西, 郁夫 and 関田, 愛子 and 柴田, さやか and 新田, 展大 and 青木, 伊知男 and 山田, 健一 and 松本 謙一郎 and 上野 恵美 and 中西 郁夫 and 柴田 さやか and 青木 伊知男}, month = {Nov}, note = {【序論】レドックスイメージングはニトロキシルラジカルを造影剤として用いて、EPRIやMRIによって動物体内でのその常磁性の消失を視覚的に観察する手法である。常磁性物質であるニトロキシルラジカルは、EPRで直接観察できるほか、プロトンのT1短縮効果があるのでT1強調MRI信号の増強によって間接的に観察することもできる。ニトロキシルラジカルは単独では安定であるが、生体に投与すると一電子還元されてヒドロキシルアミン体となり常磁性を失いEPRIあるいはMRIの画像信号が減衰する。その減衰の速度は組織のレドックスの状態によって影響を受ける。たとえば動物に高濃度酸素を吸わせると、ニトロキシルラジカルの還元体であるヒドロキシルアミンの再酸化が増加して再びニトロキシルラジカルを与えるため、見かけ上の減衰速度が遅くなる。また慢性的なセレン欠乏状態のラットにおいもニトロキシルラジカルの還元速度が遅くなる報告があり、これはセレン欠乏によるグルタチオンペルオキシダーゼ活性の低下に伴って増加した過酸化水素が間接的に関与して、ヒドロキシルアミンの再酸化が促進しているものと考えられる。一方、腫瘍組織は低酸素状態にあることからヒドロキシルアミンの再酸化が減り、これに加えて腫瘍組織内のGSH濃度の高いことやpHが低いことがニトロキシルラジカルの還元を促し、結果として見かけ上の減衰速度が速くなる。生体内でのニトロキシルラジカルの一電子還元は、直接一電子還元されるよりはむしろ、先ず一電子酸化されてオキソアンモニウムカチオン体となり、続いてこれにNAD(P)HやGSHから水素が渡されてヒドロキシルアミンに二電子還元され、二段階の反応の結果として一電子還元となる。そのため炎症などで活性酸素が大量に生成するような状況があると、最初に起こる一電子酸化の過程が促進されるため、見かけのニトロキシルラジカルの還元が促進する。組織に何らかの障害が生じて組織内のレドックス状態に変化が生じると、ニトロキシルラジカルの減衰速度にも何らかの変化が起こると予想できる。放射線を脳に照射したマウスでは記憶力の低下が起こることが報告されており、この時、脳内レドックスにも何らかの変化が起きているものと期待できる。そこで本研究では、画像解像度の高いMRIによるレドックスイメージングの手法を用いて、X線を照射したマウス脳内のレドックス状態変化の有無を観察した。 【実験】8週齢メスのC3Hマウスを麻酔し、専用の固定台に紙テープで固定した。いくつかの直径1 cmの穴を開けた鉛製遮蔽板をマウス固定台の上に置き、各穴にそれぞれのマウスの頭部が合うようにマウスの位置を微調整した。鉛遮蔽版の穴を通して、マウスの大脳部位のみにX線を8 Gy照射した。照射の翌日および約1ヶ月後に、7 T MRI装置で大脳の撮像を行った。撮像に際し先ず、マウスを麻酔して尾静脈に造影剤投与用のカニュレーションを施したうえで専用の固定台に固定した。次に体温が37℃に落ち着くのを待ち、体温管理下、T1強調画像の連続撮像を開始した。初めに数枚のベースライン画像を撮像した後、連続撮像の途中でレドックス感受性造影剤であるMC-PROXYLを尾静脈から投与した。5枚のスライス像のセットを、約20秒ごとに約20分間連続撮像した。スライスは、厚さ0.75 mmで、臭球の約1.0 mm後方からスライス間距離0.75 mmで等間隔に設定した。スライス毎の一連の経時画像からベースライン画像を差し引いて、MC-PROXYLに由来する信号の増加率を求め、その増加信号の減衰速度を画像上に設定したROI毎に評価した。 【結果と考察】動物にMC-PROXYLを投与した直後から脳内のほぼ全域でT1信号の増強が認められ、MC-PROXYLが血液−脳関門を通過して脳内に達していることが認められた。脳内のMC-PROXYLの信号減衰速度は二相性の減衰曲線を示し、初期の速い減衰とその後に続く遅い減衰が確認できた。初期の速い信号減衰の速度k1を脳内の部位毎に比較すると、信号減衰速度k1は脳の部位によって異なっており、皮質の部分よりもむしろ中央の部分で速い傾向が見られた。またk1は脳室と思われる部位では他の部位に比べて遅い傾向が見られた。後の遅い減衰速度k2には、部位による差は見られなかった。X線照射群と非照射群とで各ROI毎に平均のk1減衰速度を求めて比較すると、X線照射群では照射翌日も1ヶ月後もほぼすべてのROIにおいて非照射群よりも減衰が若干速い傾向が見られた。しかしながら両者間に統計学的な有意差は得られなかった。今回、放射線照射によって脳内のレドックスに何らかの変化が生じている可能性が示唆された。しかし現時点ではその詳しいメカニズムは不明であり、照射後の時間を追って更に詳しい解析を行う必要がある。, 第51回電子スピンサイエンス学会年会}, title = {脳のレドックスイメージングとマウス脳へのX線照射の影響}, year = {2012} }