@misc{oai:repo.qst.go.jp:00069889, author = {浜田, 信行 and 舟山, 知夫 and 坂下, 哲哉 and 小林, 泰彦 and 浜田 信行 and 坂下 哲哉}, month = {Oct}, note = {電離放射線の生物学的効果は、LET(単位長さあたりに付与されるエネルギーの量)により異なる。高LET放射線である重粒子線は、光子(X線やγ線)などの低LET放射線に比べて、直接的に照射された細胞(以下、照射細胞)に対する生物学的効果が大きい。ヒトは、宇宙飛行とがん治療の際に重粒子線に照射されるが、前者における線量・線量率は後者よりも著しく低い。放射線の線量が低いほど、そしてLETが高いほど、照射された組織内には、より多くのバイスタンダー細胞(直接的に照射されていない細胞)が混在する。このことから、低線量重粒子線の生物学的効果を明らかにするためには、照射細胞だけではなく、バイスタンダー細胞に及ぼす効果を解析する必要がある。そこで、本研究では、重粒子線照射細胞とそのバイスタンダー細胞の応答を解析することにした。  細胞周期による放射線致死感受性のばらつきを最小限に留めるため、そして、ギャップ結合を始めとする細胞間情報伝達機構を最大限に発揮させるために、高密度接触阻害培養したヒト正常線維芽細胞AG01522細胞を用いた。照射細胞の応答の解析には、ブロードビーム(HY1ポート)で10%生存線量の炭素線(18.3 MeV/u 12C, 108 keV/µm)を照射した細胞集団を用いた。また、バイスタンダー細胞の応答の解析には、コリメート式マイクロビーム(HZ1ポート、コリメータ直径20 µm)で10発の炭素粒子(18.3 MeV/u 12C, 103 keV/µm)を1カ所に照射することによって、0.00026%の細胞が照射細胞(つまり99.99974%がバイスタンダー細胞)となる細胞集団を用いた。生存率はコロニー形成法、アポトーシス誘発率はTUNEL法、セリン15リン酸化p53タンパク質の発現レベルの変化はウエスタンブロット法、遺伝子発現変化は44000プローブのマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。  バイスタンダー細胞の生存率は、10%低下した。アポトーシス誘発率は、照射細胞では少なくとも72時間まで照射後の経過時間とともに増加したが、バイスタンダー細胞では、照射24時間後に2倍に増加し、照射48時間後にはコントロールレベルに戻った。セリン15リン酸化p53タンパク質のレベルは、照射細胞では照射2時間後と6時間後で同程度に上昇したが、バイスタンダー細胞では照射2時間後では変化せず、6時間後に2倍上昇した。バイスタンダー細胞で1.5倍以上変動した遺伝子の半数以上は発現が減少しており、また、照射細胞で発現が上昇していた遺伝子の大半はバイスタンダー細胞では減少していた。これらの結果から、ヒト正常線維芽細胞における重粒子線誘発バイスタンダー効果は、生存率の低下、アポトーシスの一過性の誘発、遅延的なp53タンパク質のリン酸化、多数の遺伝子の発現変化として誘発されること、そして、照射細胞とバイスタンダー細胞の応答が異なることがわかった。また、照射細胞ではサイトカインの一種であるインターロイキン遺伝子の発現が増加したが、バイスタンダー細胞ではその受容体遺伝子の発現が増加した。更に、発現変動遺伝子群の経路解析から、照射細胞では細胞核内での情報伝達を担うp21Waf1経路とNF-κB経路の活性化、バイスタンダー細胞では細胞膜から細胞質・細胞核への情報伝達を担うGタンパク質/PI-3キナーゼ経路の活性化が示唆された。これらの結果から、照射細胞から放出される情報伝達物質がバイスタンダー細胞の細胞膜で受容され、細胞内で情報伝達経路が活性化されることによって、バイスタンダー効果が発現する可能性が示唆された。本研究によってバイスタンダー細胞で観察された一連の応答は、異常なバイスタンダー細胞の増殖を抑制するための防御機構であると考えられる。今後は、細胞レベルでの分子機構の更なる解明とともに、個体レベルでの解析が必要である。, 第4回高崎量子応用研究シンポジウム}, title = {ヒト正常線維芽細胞における重粒子線誘発バイスタンダー効果の解析}, year = {2009} }