@misc{oai:repo.qst.go.jp:00069500, author = {松本, 謙一郎 and 中西, 郁夫 and 遠藤, 和豊 and 安西, 和紀 and 松本 謙一郎 and 中西 郁夫 and 安西 和紀}, month = {Oct}, note = {【序論】重粒子線はX線やγ線に比べて酸素効果が小さく、これまで治療が困難とされてきた低酸素腫瘍の治療にも有効であるとされている。しかし全く酸素効果が無いわけではない。水溶液試料に重粒子線を照射すると、X線やγ線にくらべれば少ないが、ヒドロキシルラジカルが生成する。その生成量はLETに依存して少なくなることが報告されている。またこれとは別に、DMSOが濃度依存的に重粒子線による細胞致死を抑制することも報告されている。これらの事実は、フリーラジカル捕獲剤が重粒子線の効果を修飾できることを示している。つまり、抗酸化物質により周囲の正常組織を保護して、より効果的に且つ安全に治療が行えるようになる可能性が出てきた。そこでフリーラジカル反応を制御することより、より質の高い重粒子線がん治療を実現するため、ここでは先ずフリーラジカル反応の深度分布の解析を試みた。 【実験】ゼラチンの溶液に0.1 mMのニトロキシルラジカル(TEMPOL)と1 mMのグルタチオンを加え、プラスチック製の容器に入れて固めた。この試料にある方向から290 MeVの炭素線を照射し(試料表面での線量16 Gy)、LETが既知である試料表面の部分から、キャピラリーを使って一定量のゼラチン試料を採取した。これをX-band EPRで測定し、ニトロキシルラジカルの消失量を求めた。試料表面におけるLET、すなわち試料手前のフィルターの厚みを変えた時、LETとラジカル生成量の関係を調べた。またはフィルター厚を水の深度へ換算し、水に相当する深度とラジカル反応量の関係を解析した。同様の試料に重粒子線を照射した後、これをMRIで撮像し、T1強調画像の信号強度の変化からニトロキシルラジカルの消失量を求め、その分布を画像で観察した。グルタチオンを含まず2 mMのTEMPOLのみを含むゼラチン試料でも同様に実験を行った。この場合は、試料表面での線量を128 Gyとして炭素線の照射を行った。 容器の内壁にLiNc-BuO(常磁性酸素プローブ)を塗りつけ、これにゼラチン溶液を入れて固めた。容器に蓋をして、重粒子線200 Gyの照射前および照射後に、表面コイルを取り付けたL-band EPRでLiNc-BuOを測定し、そのEPR線幅から試料内の酸素濃度を測定した。 容器にスライドグラスを斜めに立てかけ、これにゼラチン試料を注ぎ入れて固めた。または水を注ぎ薄いフィルムで蓋をした。ある方向から重粒子線を照射した後、スライドグラスを取り出して、イメージングプレートを用いて放射化レベルの深度分布を調べた。 【結果と考察】TEMPOLとグルタチオンを含む試料に重粒子線を照射すると、TEMPOLのEPRシグナルの消失が見られた。照射線量が一定の場合には、LETの比較的小さい部分でLETの増大と伴に直線的にTEMPOL消失量(フリーラジカル反応量)が少なくなる傾向が見られた。LETの大きい部分では一度ピークが見られ、その後、ビームの終末に向けて減少する傾向が観察された。一つの大きな試料では深度によって照射線量も変化するので、照射時間を一定としてTEMPOLの消失量を補正し、これを水に相当する深さに対してプロットすると、フリーラジカル反応量は浅い部分からほぼ一定かあるいは僅かに増加傾向であり、ビーム終末付近で小さいがピークを見せることが確認された。このピークの位置は放射化のピークの深さとほぼ重なった。MRIによる画像データでもEPRとほぼ同様の結果が得られた。ビーム終末で見られるラジカル反応量のピークは充分に小さいので、むしろ表面付近からビーム終末までラジカル反応量はほぼ一定と考えたほうが妥当と言えるかもしれない。 水溶液試料に大線量(> 100 Gy)を照射すると、試料内で酸素が消費され代わりに過酸化水素が生成することが確認されている。このような大線量をニトロキシルラジカルの水溶液に照射すると、グルタチオンが存在しなくてもニトロキシルラジカルの僅かな消失が観察される。予め過酸化水素を加えた試料では、過酸化水素の濃度に依存してニトロキシルラジカルの消失量が増加することから、発生する過酸化水素がニトロキシルラジカルの消失に関与しているものと思われる。しかし放射化によって期待される試料への線量は、与える重粒子線の線量に比べて充分に少ないと考えられることから、グルタチオン非存在下で大線量の重粒子線によって引き起こされるニトロキシルラジカルの消失は、放射化による影響を反映せず、重粒子線のみの影響が観察できると予想される。そこで、グルタチオンを含まない試料に比較的大線量の重粒子線を照射すると、グルタチオンを含む試料に低線量を照射した場合に比べて、ラジカル消失量のピークが浅い方へ移行し、放射化のピーク付近では消失がほぼ観察されなくなった。このことから、ビームの終末部付近では、試料の放射化がラジカル生成に対して無視できない影響を及ぼしている可能性が示唆された。 酸素消費量の深さ依存性を同様にプロットすると、グルタチオンを含まない試料でのラジカル消失量のプロファイルにほぼ重なることが分った。つまり酸素消費のプロファイルにオーバーラップして、過酸化水素の生成が起きているだろうことが予想できるが、実際の治療に使用される数十Gyのレベルでは、過酸化水素生成量は充分に少ないものと思われる。, SEST2008(第47回スピンサイエンス学会年会、第8回日本学術振興会先端研究拠点事業セミナー)}, title = {重粒子(炭素)線の軌跡におけるフリーラジカル反応とその深度分布の解析}, year = {2008} }