@misc{oai:repo.qst.go.jp:00065729, author = {渡辺, 嘉人 and al., et and 渡辺 嘉人}, month = {Mar}, note = {福島第一原子力発電所の事故により大気中に放出された放射性核種は放射性プルームとして環境中に拡散した。最も高濃度のプルームは西~北西方向に流れ、そこに広がる里山や阿武隈高地につながる森林が高濃度に汚染された。本研究ではこうした高汚染地域の森林における樹木の影響を調べることを目的として、森林内の放射線量分布および樹木の汚染レベルから樹木の受ける放射線被ばく線量を見積もるとともに、植物体に生じうる放射線生物影響を検出するための指標の検討を行った。調査は環境省のプロジェクトの一部として行った。 事故後3年近くが経過し、プルームからの直接沈着による樹木地上部の放射性セシウムの汚染は現在までに多くは洗い流され林床に移行している。しかし、放射線感受性の高い樹木である針葉樹(スギ)では事故後に成長した針葉・球果においても、土壌あるいは汚染植物部位からの転流による放射性セシウムが蓄積し、そこから放出される放射線を針葉・球果自身が被ばくしている(内部被ばく)。それに加えて、針葉・球果は林床に蓄積した放射性セシウムから放出される放射線も被ばくしている (外部被ばく) 。林床に蓄積した放射性セシウムから放出されるガンマ線の空気中での減衰は僅かで、球果の実っている高さ3~5mの地点における空間線量は、高さ1mの地点と比べて10%程度低下するにすぎなかった。 最も汚染度の高い森林において事故初年度にスギ球果の受けた被ばく線量率は、モデルを用いた線量計算によりおよそ80 µGy/hと推定され、そのうち内部被ばくは約20%と見積もられた。事故後3年の間に被ばく線量率はおよそ半分程度にまで減少したが、高汚染地域のスギ球果の被ばく線量率は依然として国際放射線防護委員会(ICRP)によってマツの防護基準値とされている4-40 µGy/hを上回り、植物の生殖への影響・細胞遺伝学的な変化が生じる可能性が示唆された。球果内では、春から秋にかけての種子の形成・成熟期間にわたり長期間被ばくを受けると考えられる。種子胚の分裂組織の細胞には被ばくによる細胞遺伝学的変化が蓄積される可能性があり、詳細な調査・モニタリングの必要性が示唆される。 野生植物の細胞遺伝学的変化は従来、細胞分裂時の分裂像の形態的異常(染色体橋、染色体断片の形成など)を観察して、その頻度から定量されることが多い。しかしこの方法では、分析対象となる細胞分裂期の細胞が分裂組織の全細胞のごく一部に限られるために分析効率が低く、組織内に生じた細胞遺伝学的変化のうち限られた部分しか解析できないという欠点がある。また細胞分裂像の形態変化の観察には高度な熟練と膨大な手間を要する。そこで我々は、環境毒性試験で用いられるタマネギ・ソラマメ等の小核試験法を改良することで、より簡便・効率的かつ高精度な細胞遺伝学的変化の解析手法の開発を試みた。 小核試験法は、細胞分裂時の異常によって生じた異常核(小核)の頻度を、細胞分裂終了後の静止期の細胞を観察対象に分析する手法であり、観察が比較的容易で多くの細胞について効率よく分析できるメリットがある。その反面、静止期の細胞には細胞分裂前の細胞や非分裂細胞が混在しているため定量性に問題があると考えられた。そこで、動物細胞で確立しているin vitro 小核試験法を参考に、休眠期から1回の細胞分裂を経た静止期細胞のみをラベルするための細胞分裂阻害剤を探索し、動物細胞の場合に類似した二核形成法による定量的な小核試験法が植物細胞でも可能であることを見出した。 この小核試験法が実際の汚染地域の試料に適応できるかを検証するため、福島県いわき市の低汚染地域で採取したスギ種子に対して人工的な放射線照射実験を行った。X線急性照射あるいはガンマ線慢性照射を行った種子の根端分裂組織において、線量に依存した小核発生頻度の増加が確認された。それらの線量効果曲線は動物細胞で得られるものと類似しており、この試験法が種子胚に蓄積された細胞遺伝学的変化を検出するのに有効であることが確認された。実際に福島の高汚染地域で採取したスギ種子にこの小核試験法を適用したところ、観察される小核発生頻度は極めて低く、現在は慎重にデータの蓄積を進めているところである。, 野生動植物への放射線影響に関する意見交換会}, title = {福島の森林樹木における放射能汚染の影響}, year = {2014} }