@misc{oai:repo.qst.go.jp:00064883, author = {高畑, 圭輔 and その他 and 高畑 圭輔}, month = {Nov}, note = {近代の司法は個人が自由意志をそなえた存在であることを前提とする概念体系であり、モラルや社会規範もまた然りである。行為に対する責任、すなわち非難可能性は、自由意志に基づいてなされた行為であってはじめて成立し、非難可能性がなければ我々は罰を与えることはできない。しかし、Libetら神経科学者による一連の実験は、自由意志が錯覚であるという可能性を示唆した。Libetの実験は、我々が何かをしようと意識するときには、行為は脳内で既に無意識的に開始されていることを示している。つまり、我々は何かをしようと意図するかもしれないが、それは脳活動の結果としてであり、意図したことで運動や出来事が引き起こされたわけではない。原因が結果の後に起こることはありえず、意識的な意図が行為の原因になることはありえないということになる。しかし、それでも我々は、ある行為をしようと意図したことで、運動や出来事が引き起こされたかのように感じる。こうした起因作用の感覚こそがsense of agency (意志作用感:SoA)であり、行為の責任(responsibility)において重要な心理的要素である。 SoAは、2つの経路から産生されると考えられている。一つ目は、運動を開始する際に内部モデルに基づいて運動の結果が予測され、これが実際の感覚フィードバックとが一致した際にSoAが増強するという、運動予測(prediction)に基づく経路である。二つ目は、SoAが行為の結果が知覚された後に事後的に改変されるというpostdictiveな経路である。後者はあまり検証されていないが、行為の責任を問う場合には問題となりうる。なぜなら、SoAが事後的に改変されしまうならば、本人による行為の原因帰属判断もまた歪められてしまうからである。実際に、健常人でも行為の結果が自己にとって不都合な場合には原因を外部に帰属させてしまうという自己奉仕バイアス(self-serving bias)の存在が知られている。一方、うつ病の患者は、自身にとってネガティブな結果の原因を過剰に自己に帰属させてしまう。我々は、これらの認知バイアスにSoAのpostdictiveな改変が関与しているものと考え、SoAの行動学的指標とされるIntentional Binding (IB)と呼ばれる現象に注目し、随意的運動が報酬や罰などの結果を引き起こした場合に、結果の情動価によってIBがどのように変化するかを検証した。その結果、自己にとってネガティブな結果が生じると、IBすなわちSoAが減弱するという結果が得られ、自己奉仕バイアスのパターンと一致した。これに対して、うつ病の患者ではこのような傾向はみられなかったことから、うつ病患者の過剰な自責傾向(self-blaming bias)を反映するものと考えられた。 これらの結果は、行為の結果によってSoAが変化することを示している。先行研究もふまえ、SoAがモラルや責任とどのように関係するかを議論する。, 第42回日本臨床神経生理学会学術大会}, title = {意志作用感と責任}, year = {2012} }