@misc{oai:repo.qst.go.jp:00064689, author = {今岡, 達彦 and 細木, 彩夏 and 臺野, 和広 and 高畠, 賢 and 西村, まゆみ and 島田, 義也 and 今岡 達彦 and 細木 彩夏 and 臺野 和広 and 高畠 賢 and 西村 まゆみ and 島田 義也}, month = {Aug}, note = {放射線防護において乳腺は、がんリスクの高い臓器として重要である。近年、乳腺の幹細胞及びがん起源細胞に関する知見が急速に増加している。  現在の低線量・低線量率リスク評価は、2本のトラックが生じるDNA損傷間の相互作用が無視できるという原理に依拠しているが、生体組織における細胞のターンオーバーを考慮することも理にかなっている。乳腺上皮ではホルモンの周期的変動に従ったターンオーバーが存在し、内腔前駆細胞及び筋上皮前駆細胞がそれぞれ独立に活発な自己複製及び分化細胞の産生を行っている。ターンオーバーにおける寿命は分化細胞の方が前駆細胞より短いと考えられる。現時点では、分化した内腔細胞からは内腔型乳がん、内腔前駆細胞からは基底様型乳がんと呼ばれる乳がんが発生すると考えられる。組織幹細胞の中には照射されると細胞分化が誘導され、もしくは他の細胞との競合の中で排除されることによって、幹細胞集団内のゲノム情報の健全性を維持するものがあるが、乳腺についての情報は不足している。  X線透視を長期にわたって受けた患者の乳がんリスクを見ると、低線量影響は長期の反復によって蓄積している。これはターンオーバーが遅く寿命の長い細胞集団中に変異が生じることによると考えられる。このリスクが原爆被爆者等の急性単回被ばくより低いかどうかは、異なる集団間の比較となるため結論が難しいが、動物実験では、思春期後の乳腺発達期の間に比較的短い期間にわたって照射した実験で、急性単回被ばくより低い影響が見られる傾向がある。乳腺発達期に被ばくしたヒトでは内腔型乳がん、それ以後に被ばくした場合は基底様型乳がんが多いこと、若年期に被ばくした原爆被爆者の早発乳がんリスクが年齢とともに急減することを合わせ考えると、これらはすべて、内腔型乳がんの起源となる分化した細胞のターンオーバーで説明できるかもしれない。  このように幹細胞及びがん起源細胞に関する知見は、長期被ばくによるがんリスクの発生機序を考えるうえで潜在的に重要である。今後さらに、乳腺の各種細胞におけるDNA損傷修復、分化誘導及び細胞間競合等によるゲノム維持機構、各細胞集団のターンオーバー速度の測定、放射線誘発がんの起源細胞の同定、これらを取り込んだ数理モデルの開発と実データとの整合性の検証などの分野で、研究の進展を図ることが重要である。, 京都大学原子炉実験所専門研究会「長期放射線被ばくによる生物学的影響研究の展望」}, title = {長期の被ばくによる乳がんリスクの蓄積機序に関する考察}, year = {2012} }