@misc{oai:repo.qst.go.jp:00063929, author = {蓑原, 伸一 and 蓑原 伸一}, month = {Dec}, note = {HIMACでの炭素線治療の臨床運用開始から15年が経過したが、その中で医療現場から物理工学サイドに対するニーズも大きく変化している。基本的には「高精度で安定した炭素線治療システム」というのが医療現場のニーズであるが、臨床経験・扱う患者数と医療スタッフのバランス、関連する周辺技術の進歩によって、「高精度」や「安定」の意味合いが大きく変化している。 例えば現在、放射線治療分野ではIGRT(Image Guided Radiotherapy)のもと、治療計画の段階では高分解能のCT、MRI、PETが利用され、また照射室では患者の位置決め・監視に高分解能のX線撮影画像(撮影、透視、CT)が、オンタイムで利用可能となりつつある。約15年前、HIMACではオンラインでの2方向X線-II管画像による患者位置決めを導入して治療を開始したが、これはまさしくIGRTであった。ただ当時のコンピュータ技術・開発環境(装置、エンジニアなど)では、現在家庭用パソコンで誰もが利用できている画像処理でさえ、開発に時間と費用が掛かり、現場からの改善要求を反映するのに苦慮した。この分野の装置・開発のコストパフォーマンスはこの15年で数百倍の差異と思われる。一方、そのようなコンピュータ技術の進歩を短期間で治療現場に導入できるかとなると、そう単純ではない。新施設であれば最新の技術をベースに装置やシステムの開発・製作が行えるが、現在のHIMAC炭素線治療のように年間700人近い患者治療を高い品質で維持していくには、治療の継続性・臨床結果の連続性も要求される。医療現場のニーズとしてはこのほうが圧倒的に強く、その上にさらなる臨床成果の向上につながるための技術開発を行う必要がある。ややもすると新技術開発だけが研究成果として目立ちやすいが、HIMACでの炭素線治療の成果を支えているのは、治療の継続性を維持しながらの地道な改良の積み上げ(現場からの要望と、照射系のみならず加速器を含めた物理工学的対応)によるところが大きい。 HIMACに限らず粒子線治療装置は、一般の放射線装置に比べれば極めて巨大で複合的なシステムであり、多くの要素技術を総合的に積み上げて構築されている。個々の要素技術は異分野での技術発展に合わせて進歩していくが、これらの要素技術を、医療現場のニーズに応えて、ルーチンの臨床運用にどう展開・導入していくかも、物理工学的対応にあたる。これが出来なければ、いずれ装置は時代遅れのものになり、少なくとも研究施設で粒子線治療を続ける意味は無くなる。一方、物理実験であれば新しい装置にトラブル・失敗はつきものであるが、臨床運用では装置トラブルによる誤照射は許されず、高品質のQA/QCのもとで導入・運用することが求められる。例えば、現在HIMACの患者治療で利用可能となっている積層原体照射法は、研究的には1983年に放医研から提案された方法であり、1994年のHIMAC治療開始時にも一部は設計に組み入れてあった。しかし最初の臨床利用は2005年で、さらにこの2年ぐらいでようやく定常的に利用できるようになった。この間、安全な治療照射の実現・安定した運用のための地道な開発・改良とQA/QCが積み上げられてきた。 発展的な粒子線施設を運営していくには、そのシステム設計の最初の段階で、その後の技術展開【必ず変化する】を受け入れやすいようにしておかなければならない。そのような視点から物理工学部では2007年に「普及型粒子線治療装置システムに関する検討」(HIMACレポート No.122)としてまとめた。現在開発・建設を進めている次世代照射システムは、そこでのコンセプトに基づいている。 現在、炭素線治療の良好な臨床成績・QOLが、治療技術開発予算の呼び水にもなっており、安定した臨床運用と新治療技術導入の双方を今後ともスパイラル的に発展させていくことが我々の使命だと考えている。 本シンポジウムは「先端科学と社会の接点」がテーマであるが、放医研の物理工学的対応は、炭素線治療の臨床成績・QOLの向上とその普及と言う形で常に社会からの視線を受けており、「接点」といよりももっと強く社会に密着しながら今後とも展開していくものと考える。, 第9回重粒子医科学センターシンポジウム}, title = {医療現場のニーズと物理工学的対応}, year = {2009} }