@misc{oai:repo.qst.go.jp:00063175, author = {野口, 実穂 and 平山, 亮一 and 岡安, 隆一 and 平山 亮一 and 岡安 隆一}, month = {Jul}, note = {はじめに:  放射線治療は副作用が少なく、高いQOL(Quality of life:生活の質)を得られるガン治療法として注目されており、近年患者数が急激に増加している。放射線治療は主に局所的なガンの治療に用いられ、腫瘍制御に大きく貢献しているが、一方でガンの種類や大きさによっては放射線抵抗性を示すものがあり、またガンの近隣に重要臓器がある場合には照射が制限されるなどの問題もある。このような場合には放射線照射に化学療法剤を併用するなどの方法が選択されている。近年、従来の化学療法剤とは異なり、特定の分子の活性やシグナル伝達経路を標的とした分子標的治療薬が開発されており、放射線生物学的基礎研究から放射線治療と分子標的治療薬の併用は腫瘍制御の向上につながることが提案されている。 分子標的治療薬の一つである17-AAGは熱ショックタンパク質Hsp90の機能を阻害する薬剤である。Hsp90はガン細胞で発現が高く、細胞内の様々なシグナル伝達に関与している。本研究ではX線と分子標的治療薬17-AAGを併用してX線の細胞致死効果増強とそのメカニズムについて検討し、さらに炭素線と17-AAGの併用でも炭素線細胞致死効果の増強を見出したので、ここに報告する。 \n材料・方法:  ヒト前立腺癌細胞DU145、及び正常ヒト胎児肺線維芽細胞HFL IIIを用いた。17-AAGは細胞培養液中に最終濃度が100nMになるよう添加し、24時間後にX線、及び炭素線を照射した。X線はPANTAC HF-320 (島津製)を用い、最大電圧値200kVp、電流値20mAの条件で照射した。炭素線は放医研重イオン加速装置HIMACの290MeV/u C-ionビームを用い、LET 70keV/μmの条件で照射を行った。 コロニー形成法にて細胞生存率の測定を、定電圧電気泳法でDNA二本鎖切断(DSB)の検出を行い、western blotting法にてDSB修復関連タンパク質の動態を調べた。 \n結果:  1)X線と17-AAGの併用効果 ?細胞致死効果への影響 17-AAGがX線の細胞致死効果に影響を与えるかどうかをコロニー形成法により調べた。X線を0, 2, 4, 6Gy照射し、14日後に残った細胞塊数から各線量における生存率を求めた。 X線と17-AAGを併用(以下、17-AAG+X線併用)したときのDU145細胞の生存率はX線照射単独の場合に比べて著しく減少した(図1)。一方、正常細胞HFL IIIにおいては、17-AAG+X線併用とX線照射単独で細胞生存率の差はほとんど見られず、併用の効果は認められなかった。 \n?DNA二本鎖切断修復への影響 放射線によりDNA上に作られた二本鎖切断(以下、DSB)は細胞死を誘発しやすい損傷であることが知られており、一方で細胞はDSBを修復する機構を備えている。17-AAG+X線併用による細胞致死効果の増強にDSB修復機構が関与しているかどうかを調べた。  20GyのX線照射で作られたDSBが時間経過とともに修復されていく様子を調べたところ、X線単独では照射後6時間で約10%程度のDSBが残ったのみであり、ほとんどが修復されていたのに対し、17-AAG+X線併用では照射後6時間経過しても約40%のDSBが修復されておらず、17-AAGは放射線誘発DSBの修復を抑制することがわかった(図2)。 縦軸に修復されていないDSB量、横軸にX線照射後の時間を示す。X線は20Gyを照射した。 \n?DSB修復タンパク質への影響 17-AAGはHsp90タンパク質の機能を阻害する薬剤であるが、Hsp90は様々なタンパク質と複合体を形成しているため、17-AAGはHsp90と複合体を形成しているタンパク質の分解を誘導し、機能を阻害する。 DSB修復機構には主に2つの経路があり、それぞれの経路に複数のタンパク質が関係している。Western blotting法により、タンパク質の発現量を調べたところ、17-AAGの作用によりDSB修復関連タンパク質であるRad51とBRCA2の発現量が減少したことがわかった。 \n2)炭素線と17-AAGの併用効果 17-AAGがLET 70keV/μmの炭素線による細胞致死効果にも影響を与えるかどうかを、細胞生存率から調べた。 炭素線と17-AAGを併用(以下、17-AAG+炭素線併用)したときのDU145細胞の生存率は炭素線照射単独の場合に比べて大きく減少した(図3)。一方、正常細胞HFL IIIにおいては、X線の場合と同様、17-AAG+炭素線併用と炭素線単独との細胞生存率の差はほとんど見られず、併用の効果は認められなかった。 \n考察・結論: 今回我々はX線と17-AAGを併用することでX線の細胞致死効果を増強できることを示した。このメカニズムとして、17-AAGによりDSB修復関連タンパク質の分解が誘導されて発現量が低下したことで、放射線誘発DSBの修復が阻害され、最終的にX線の細胞致死効果が増強されたと考えられる。また、炭素線の細胞致死効果が17-AAGにより増強されることも見出した。炭素線治療においてもX線と同様に再発癌や重要臓器の防護など、耐容線量が問題になり、薬剤との併用を必要とする場合がある。しかし、炭素線の効果を増強する薬剤はほとんど知られておらず、17-AAGは炭素線治療に有効な薬剤として、今後の応用が期待される。, 高LET放射線研究会}, title = {放射線と分子標的治療薬17-AAG併用による細胞致死効果の増強}, year = {2009} }