@misc{oai:repo.qst.go.jp:00063171, author = {辻, 厚至 and 曽川, 千鶴 and 須藤, 仁美 and 須尭, 綾 and 吉田, 千里 and 小泉, 満 and 佐賀, 恒夫 and 辻 厚至 and 曽川 千鶴 and 須藤 仁美 and 須尭 綾 and 吉田 千里 and 小泉 満 and 佐賀 恒夫}, month = {Jul}, note = {1.はじめに 悪性中皮腫は、主に胸膜から発生する悪性腫瘍で、病理学的に上皮型、肉腫型、二相性(混合型)の3つに分類されている。中皮腫の発生には、アスベストのばく露が関与しており、過去の使用量から、今後患者が増加すると予測されている。最近では、アスベストを使用した工場近辺の住人に中皮腫の発生頻度が高いことがわかり、大きな社会問題にもなっている。中皮腫は、確立された治療法がなく、診断されたときには進行性の腫瘍であることが多く、予後が非常に悪い腫瘍である。中皮腫も早期に発見できれば、他の腫瘍と同様に予後の改善が期待できる。そこで、早期発見を目指して、早期から発現している中皮腫マーカー特異的な画像診断プローブの開発研究を行った。 中皮腫では、新しい治療法の開発が精力的に進められている。その際に、治療効果の非侵襲的な診断法が必要となる。そこで、中皮腫モデルマウスにおいて、FDG、FLT、チオチミジンのPETトレーサーの比較検討を行った。中皮腫は、胸膜に広く分布するため、放射線治療の際に、正常臓器の肺の放射線障害のリスクを抑えるために、中皮腫に対して十分な線量が照射できないことから、放射線治療の効果が低いことが知られている。重粒子線治療は、一般的な放射線治療に比べて、腫瘍に線量を集中できる。そこで、中皮腫モデルマウスで重粒子線治療の有効性を検討するとともにPETトレーサーによる治療の評価ができるかどうかの検討のために、照射後の腫瘍集積の変化を追跡した。 \n2.方法 2-1. 中皮腫特異的画像診断プローブの開発 中皮腫マーカーに対する抗体(IgG)をI-125とIn-111で放射性標識し、ヒト中皮腫細胞を使って細胞結合実験、競合阻害実験、細胞内局在実験を行った。皮下移植モデルマウスを使って体内動態の検討とSPECT撮像を行った。次に、IgGを小型化したFabを使って同様の検討を行った。Fabでは、Cu-64で標識し、PET撮像も実施した。 2-2. 中皮腫モデルマウスにおけるPETトレーサーの検討と重粒子線治療の検討 ヒト中皮腫細胞(肉腫型、上皮型)を胸膜腔内と皮下に移植し、同所移植と皮下移植モデルマウスを作成した。FDG、FLT、チオチミジンを投与し、各組織型の腫瘍集積性の比較とPET撮像を行った。 ヒト中皮腫細胞(肉腫型、上皮型)を皮下移植し、重粒子線またはX線を照射し、経時的に腫瘍の大きさを計測した。照射後3時間、1日、7日、14日にFDGとFLTを投与し、腫瘍への集積の変化を測定した。また、各タイムポイントでの病理学的変化を検討した。 \n3.結果と考察 3-1. 中皮腫特異的画像診断プローブの開発 放射性標識IgGは、中皮腫細胞に特異的に結合し、その後内在化することがわかった。体内動態の結果からもIn-111標識IgGは腫瘍への集積が時間ともに上昇したが、I-125標識IgGでは、他の臓器と同様に時間とともに低下した。In-111標識IgGで腫瘍の画像化に成功したが、血液クリアランスが遅いため、PETへの展開には小型化する必要があることがわかった。そこで、In-111標識Fabで同様の検討を行ったところ、血中から速やかに排出され、早期に高い腫瘍/血液比を得ることができた。そこで、半減期13時間のポジトロン核種であるCu-64で標識し、PET撮像を行ったところ、投与6時間後から良好なコントラストの画像を得ることに成功した。臨床への応用を考えた場合、早期の中皮腫はサイズが小さいため、プローブの集積の絶対量が少ない。そのため、感度と解像度に優れたOpenPETの実現が期待される。 3-2. 中皮腫モデルマウスにおけるPETトレーサーの検討と重粒子線治療の検討 中皮腫モデルマウスにおいて、PETトレーサーの集積を評価したところ、肉腫型では糖代謝マーカーであるFDGの集積が、上皮型では細胞増殖マーカーであるFLTやチオチミジンの集積が高いことがわかった(図1)。臨床においても進行性の肉腫型にはFDGが高集積を示し、一方上皮型には、FDGの集積が低いことが報告されており、今回の結果より、組織型により評価に適するプローブが異なることが示された。 重粒子線とX線を中皮腫モデルマウスの皮下腫瘍に照射したところ、肉腫型、上皮型ともに照射後2週間程度は腫瘍サイズが大きくなったが、その後減少に転じ、重粒子線では30Gy、X線では60Gyで腫瘍はほぼ消失した。病理解析より、照射後7日程度からアポトーシスやネクローシスなどの細胞死が観察され始め、14日後以降では、繊維化が観察され、細胞密度が低下することがわかった。このことは、腫瘍サイズが縮小するタイミングと一致していた。 重粒子線30GyとX線60Gy照射後のFDGとFLTの腫瘍への取込の評価を行った。上皮型腫瘍では、重粒子線照射群、X線照射群ともにFLTの取込が照射3時間後と1日後で照射前に比べ低下した。一方、FDGの上皮型腫瘍への取込は重粒子線およびX線照射の治療効果と相関しなかった。肉腫型腫瘍では、元々の集積性が低いこともあり、重粒子線照射群ではFLTの取込がほとんど変化しなかったが、X線照射群では上皮型と同様にFLT集積は3時間以降減少した。FDGの肉腫型への集積の変化は、上皮型と同様に治療効果とは相関しなかった。以上より、上皮型では、重粒子線とX線ともにFLTが治療効果の評価に適していることが示唆されたが、肉腫型では、X線治療効果の評価にはFLTが適しているが、重粒子線治療効果の評価にはFDG、FLTともに適していないと思われ、他のトレーサーでの検討が必要である。 中皮腫の重粒子線治療やその効果判定の画像診断について、今後、臨床での検証が必要であるが、FLTやチオチミジンの腫瘍への集積の絶対量は、FDGより低いため、既存のPET装置より感度が高いOpenPETの実現が期待される。 \n4.結論 我々は、中皮腫の早期から発現している腫瘍マーカーのERC/mesothelin特異的なPETプローブの開発に成功した。今後の臨床応用が期待される。中皮腫の重粒子線治療の有効性をモデルマウスで示し、その治療効果の評価には、上皮型ではFLTが適していることを示したが、肉腫型に適したPETプローブは残念ながら見つけられなかった。今後、他のPETプローブの検討が必要である。重粒子線治療と上皮型のFLTによる治療効果の評価は、臨床応用が期待される。また、これら腫瘍イメージング研究において、従来のPETスキャナーより、感度と解像度に優れた機器が必要であり、OpenPETの実現が期待される。, 平成21年度次世代PET研究会}, title = {OpenPETへの期待 ―腫瘍イメージングの立場から―}, year = {2009} }