@misc{oai:repo.qst.go.jp:00060077, author = {邵, 春林 and 古澤, 佳也 and 和田, 成一 and 舟山, 知夫 and 小林, 泰彦 and Shao Chunlin and 古澤 佳也 and 舟山 知夫 and 小林 泰彦}, month = {Jul}, note = {1.はじめに  荷電粒子線による線量付与の分布はX線やγ線のように一様ではなく、トラック構造と呼ばれるように電荷や速度に依存した電離密度の分布構造を持ち、また粒子線が標的に到達する確率は時間的・空間的に離散的である。このため重粒子線が細胞に与えるエネルギー付与は通過した粒子線と細胞の位置関係によって異なる線質の放射線を受けることになる。また一般には放射線による細胞の障害は細胞核(あるいはDNA)が照射されることによる影響と考えられているが、粒子線によって直接ヒットから逃れた細胞であっても放射線の影響が現れるバイスタンダー効果も報告されている。このため、重粒子線を特定の細胞に対して照射するためのシステムを完成させ、放射線効果のエンドポイントとして微小核、アポトーシス、DNA切断、発現蛋白の検出などにより生物効果の解析を行う事を目的とした。  今年度はバイスタンダー効果を細胞の微小核形成を中心に調べた。バイスタンダー効果の仲介役として、可溶性物質の活性酸素種(ROS)や形質転換成長因子b1 (TGF-b1)が被照射細胞から放出されることが報告されており、ごく最近では我々が被照射細胞から放出された一酸化窒素誘導体(NO)が非照射細胞の微小核形成に関与することを発見した。他方、細胞間隙信号伝達(GJIC)が放射線誘発バイスタンダー効果の重要な役割を担っている証拠も多く見つかっている。このような二つの経路;間接的および直接的なバイスタンダー効果が示されているが、どちらが主要な役割を果たしているかなど詳しいことはほとんど判っていない。この研究では現在主役を担うと考えられているGJICと、明らかにバイスタンダー効果に影響を及ぼすROSについて、GJICを阻害するPMAとROS補足剤のDMSOを用いて調べた。 \n2.実験方法 2.1.細胞  正常皮膚繊維芽細胞AG1522を用い、抗生物質と18%FBSを含むイーグル最小培地(E-MEM)中で、5%-CO2、37℃の炭酸ガスインキュベーターを用い培養を行った。重粒子線を照射する細胞は35mm径の特製のプラスチックリングの底面に8.5-mmのカプトンフィルムを張った容器を用い、照射の4日前にフィルム上に2x105 cells/dishの密度で播種し、2日目に培地交換を行って照射時には細胞はコンフルエントな状態とした。ディッシュは照射の1時間前に1nM-PMA(4b,9a,12b,13a,20-pentahydro-xytiglia-1,6-dien-3-one 12b-myristate 13-acetate, 10-6 M prepared in DMSO)を含む培地に交換した。この場合PMAの溶媒であるDMSOが培地中に0.1%含まれる状態となるので、PMA処理群の対照試料には0.1%-DMSOを添加した培地も用いた。 2.2.照射  マイクロビームの照射には原研高崎研のTIARAにおけるHZ-1またはHY-1ビームコースにて得られる13.0 MeV/u の20Ne7+ (430 keV/mm) および 11.0 MeV/uの 40Ar13+ (1260 keV/mm)ビームを用いた。照射粒子数の制御は、プラスチックシンチレーターと光電子倍増管を用い、細胞を通過した粒子数を計測することによって行った。照射直前に培養培地を抜き取り、乾燥防止のために細胞上に同じカプトンのフィルムを被せた。照射は次の二つの方法で行った。一つは、ディッシュ中11x11 mm2の領域内の1〜121箇所(1x1, 2x2, ノ., 11x11の正方マトリックスの各位置)に位置する細胞に対して1粒子づつ照射する方法で、他は49(7x7)箇所に存在するそれぞれの細胞に1〜4粒子づつ照射する方法である。照射後、2mlの50 nM PMA あるいは 0.05% DMSOを含む新鮮な培地を加え、細胞はそのまま15時間培養した。 2.3.微小核形成試験  細胞分裂阻害法を用いて照射細胞の微小核形成を調べた。集めた細胞の一部を2.5 mg/mlのサイトカラシンBを含む2mlの培地中で48時間培養し、再び回収した細胞を0.075M-KClで37℃10分間処理し、−30℃で一晩メタノール固定を行った。観察時に固定した細胞をスライドグラス上に拡げ、10mg/mlの濃度のアクリジンオレンジで5分間染色した。二核細胞中に存在する微小核を蛍光顕微鏡下で形態的に識別し、3回以上の異なる実験についてそれぞれ少なくとも一つの実験点について1000個以上の二核細胞について計数した。 \n3.結果および考察  重粒子線によって誘発される微小核生成の頻度を図1に示す。一粒子のAr13+イオンで正確に照射した場合、微小核の形成は照射した細胞の数に対して二相性の上昇を示した。また微小核形成はシャーレ中の1細胞だけが1粒子で照射された場合でも非照射対照群の2倍の高頻度で起こり、これは照射されていない数百の細胞にバイスタンダー効果によって微小核形成が起こった事を示している。照射細胞数を4〜121に増やした場合、微小核形成の収率は連続的に上昇したが4細胞以下の場合に比べてその上昇は緩やかであった。細胞をPMAで前処理した場合、アルゴン粒子照射による微小核形成の収率は完全に抑えられて、非照射対照群とほとんど同じ程度まで減少した。この微小核形成の減少はPMAと溶媒のDMSOの効果によるものと考えられる。PMA処理におけるDMSOの影響を調べるため、アルゴン粒子で照射する細胞に0.1%-DMSOだけを添加して調べたところ、微小核形成の部分的な収率の低下がみとめられた(図1)。PMAは優れた細胞間隙信号伝達(GJIC)の抑制剤であり、DMSOは活性酸素種(ROS)の補足剤であるので、図1に示した結果は、GJICとROSが共に放射線誘発バイスタンダー効果に関与していることを示している。PMAだけを添加した実験はできないが、PMAだけでも十分な抑制が起こるとするなら、GJICがバイスタンダー効果の本質的な役割をになっているかもしれない。  バイスタンダー効果の線量依存性を調べるため、7x7(49ヶ所)に位置する細胞に1〜4個の粒子を照射した。この場合のシャーレ中の細胞に形成する微小核の収率に有意差は認められなかった(図2)。ここでも微小核形成のDMSOによる部分的抑制と、PMAによる完全な抑制が観察された。  一方、Ne7+イオンを用いて細胞照射を行い同じ方法でバイスタンダー効果による微小核形成を調べた結果、LETの異なる事に起因すると考えられる影響は見られなかった(データーは示してない)。  図1・2に示す結果から、被照射細胞数も損傷の程度も周囲の非照射細胞に対する微小核形成の主因ではない事が示唆された。これは最大数の121カ所の細胞を照射した場合でも照射された細胞の数はシャーレ中の総細胞数の約0.015%であり、この数は微小核誘発の測定に寄与し得ない少数である。これらのことから、粒子の通過した細胞は何らかの重要な効果、例えばGJIC信号経路または培地を経由したを介したバイスタンダー効果の引き金となっていることが示唆される。, 第11回TIARA研究発表会}, title = {重粒子線によるバイスタンダー効果の発現機構と照射粒子}, year = {2002} }