@article{oai:repo.qst.go.jp:00058624, author = {永津, 弘太郎 and 永津 弘太郎}, journal = {「放射線」}, month = {Jun}, note = {単純X線による透視画像や単光子放射断層撮影法(Single photon emission computed tomography, SPECT),陽電子断層撮影法(Positron Emission Tomography, PET)等による高度な画像診断・機能評価の例があるとおり,放射線を利用した可視化に基づく核医学診断は現代医学の一分野として広く認識されている。診断に相対するもう一つの放射線の医学利用,即ち放射線治療では,放射線のエネルギーを選択的に腫瘍細胞へ付与することで,その細胞傷害性から治療効果を望む。 コンピュータ断層撮影(Computed Tomography, CT)や陽子・重イオンなどを利用する粒子線治療では,放射線は体外から“照射”という形で与えられる。一方,核医学診断や放射性医薬品を利用する治療(いわゆる内用療法)では,投与された標識化合物が体内で放出する放射線を計測・利用するという違いがある。後者は,投与される標識化合物の生体内特性によって集積や代謝が変化することから,その挙動を考慮しつつ,利用目的に適う放射性核種(以下,RIとする)の選択がなされる。その選択にあたっては,崩壊形式や半減期だけでなく,化合物の構造に対応する易標識性や代謝機能を制御する等の様々な検討が行われる。 同時に,RI入手の簡便性については想像以上の影響がある。物理的減衰という避けられない制約があるRIを社会活動の枠組みに落とし込む際,容易かつ安定した入手方法が確立することは,その利便性を大幅に向上させる。従って,候補化合物の選抜においてはRIの入手性も重要な検討項目の一つとなり,“選ばれた”核種は利用が亢進すると共に,開発リソースの集中が起こる。その結果,益々の好循環,即ち当該RIを利用する研究の進展や新規医薬品の誕生・上市など,発展的な社会活動へ繋がっていくことが予想される。 どのようなRIが核医学で利用されているかを俯瞰するため,筆者はJournal of Nuclear Medicine誌のオンライン検索を利用し,そのヒット数から評価を行った1)。単純な検索方法につき,多くの誤差を含むことを前提とした評価になるが,最頻出核種は,18F,99mTc,11C,131I,111Inという結果を示した。この僅か5核種で現在のRI供給体制の全てが網羅されていること,及び診断と治療という両用途が出現していることは興味深い(Table 1)。具体的には,RI製造装置として医療用小型加速器(いわゆる院内製造),放射性医薬品企業による中大型加速器,及び大規模製造とグローバルな供給を可能とする研究炉が示されている。また,加速器を有さずとも適宜線源入手を可能とするジェネレータ化された線源供給方法は,多くの臨床現場においてその利便性が評価されている。さらに(診断と比較した場合)国内では数少ない治療(いわゆる内用療法)核種として131Iが出現していることも,その効果・有効性を示すものと考えられる。 この対極に,利用要望がありながら商業的な供給を期待出来ず,その製造を自ら行う必要があるRIも多数存在する。実際,現在の核医学研究では,そういった希少RIの利用要望が著しく高まっており,我々を含めた公的機関が金属やハロゲン核種等の頒布を行う例も少なくない。 筆者は医学利用を前提としたRI製造を,加速器工学と標識化学という異なる研究分野を融合・翻訳するための実践的研究分野と考える。即ち,両者の特徴と要求を理解すると共に,実用的な量と質を持ったRIを製造するための照射方法や機器,並びに分離精製方法を開発する。その研究成果の出力として実践的用途に耐える高品位RIの供給を担い,社会的責任を果たすことを目指している。 こういった背景を元に本稿では,いくつかの希少RIの製造に焦点を当てながら,効率的なRI製造を意図した我々の研究開発の一例を紹介してみたい。}, title = {診断・治療に用いる放射性核種の製造}, year = {2016} }