@article{oai:repo.qst.go.jp:00058380, author = {石原, 弘 and 石原 弘}, issue = {3}, journal = {放射線科学第56巻第03号}, month = {Oct}, note = {放射線被ばく線量を評価する代表的手法は既に確立されておりますが、実際の事故の際には外傷や熱傷、化学物質暴露を伴うなど、測定値に影響しうる様々な要因が同時に発生することを考慮する必要があります。その対策として、原理的に異質な評価方法を併用することで、実像に近い値を得ることができることが期待されます。  被災者から得られた生体試料を使用する生物学的評価方法としては、放射線によるDNAの切断を測定する染色体分析が既に実用レベルに達しておりますが、今後も原理的に異質な測定技術の開拓を進める必要があります。本稿ではその一つである、DNA切断後に発生する遺伝子活性化を利用した線量評価技術について説明します。  放射線被ばく後に細胞の中で発生する様々な応答の分子メカニズムの解析が現在も進められています。まず、細胞核のDNAが損傷を受けると修復のために細胞は増殖を停止しますが、DNA損傷が重篤な場合は自爆します。その際、多数の遺伝子が活性化してmRNAや蛋白質の量が増減するので、これらの変動を定量することで障害の程度を推定することができます。被ばく後長時間を経過すると変動はリセットされるので変動測定は困難ですが、照射後の短時間の変化の分析や、低線量の被ばくの解析に適しています。  分子生物学分野では数倍から数十倍のmRNAや蛋白の増減の研究が進められてきましたが、2倍以内の変動の値を少ない偏差で再現性良く得るような高度な定量技術は普及しておりません。当室では高精度定量プロセスを標準化することにより、極微量のmRNAを高精度に定量する方法を確立し1)、放射線障害の程度の評価技術への適用を進めています2)。  血液は採取の容易な生体試料ですが、放射線に感受性の高いリンパ球が含まれます。マウスをモデルとした結果を図Nに例示しますが、マウスの全身にX線を照射して4時間後に、尾の先端から1滴の血液を採取し、細胞の自爆の際に活性化するpuma遺伝子と、増殖する白血球で活性化するc-myc遺伝子のmRNAをreal-time RT-PCRで測定しました。puma/c-myc比は0.1Gyから0.5Gyの照射線量に応じて増加し、血液細胞の障害を量的に反映していることがわかります。50μLの血液から、30種類以上のmRNAを精密に測定することができますので、目的に応じて適切なmRNAを選択することができます。DNA損傷による増殖停止に先だって活性化するCDKN1A(p21)遺伝子のmRNAを測定すれば、25mGy以上で有意な増加が認められます(図N+1)。これらの値は、マウス個体が異なっていても変動範囲は20%以内と再現性が高く、被ばく線量の推定が可能になります。  現在当室では、内部被ばくによる障害レベルの測定や、電離放射線の線質による相違、被ばく障害を軽減する物質の検索、生体試料の追加照射を利用した補正方法など、実用化を目指した研究を進めております。}, title = {血液細胞mRNAの精密定量による被ばく線量評価の技術開発}, volume = {56}, year = {2012} }