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内容記述 |
【序論】トリチオカルボナート型RAFT剤は、共役モノマーの重合制御に用いられる。RAFT重合は、ラジカルがこの化合物のC=S二重結合に付加することで進行する。これまで、重合過程でのラジカル付加反応素過程の観測を目指し、レーザーと同期した時間分解(TR-)ESR法とパルスESR法による中間体ラジカル観測が行われてきた[1]。本研究では、この手法をRAFT剤のラジカル付加反応に適用し、実験手法の有用性を示すとともに、RAFT剤の反応性評価に資する速度論的な知見を得ることとした。【実験】RAFT剤には、B6646 (東京化成)を用いた。ラジカルには、光重合開始剤(IRG184)の光分解で生成するHy-CyHを使用した。これらのトルエン溶液に半導体レーザー(355 nm)を照射し、293 Kで各種ESR測定を行った。【結果と考察】トルエン中でのIRG184の光分解反応におけるTR-ESRスペクトルでは、Hy-CyH由来の等価な4つの水素による五重分裂ピークと、超微細相互作用がないベンゾイル由来の一重ピークが観測された。この系にB6646を添加し、同一の測定をすると、低磁場側に新たな一重ピークが観測された。この反応では、B6646のC=S二重結合にHy-CyHが付加することが考えられる。gセンターが低磁場側にシフトしているのは、硫黄原子が不対電子に対してスピン軌道相互作用を強めているためと考えられる。次に、Hy-CyHのESE信号をB6646の各濃度で測定した。Hy-CyHのESE信号減衰速度をB6646濃度に対してプロットし、直線解析からB6646への反応速度定数をk = 2 x 10(8) M(-1) s(-1)程度と決定した。これは、重合性モノマーであるtert-ブチルメタクリレートやtert-ブチルアシレート[1]より十〜百倍大きく、B6646の高いラジカルトラップ能が実証された。[1] Takahashi, H.; Marushima, Y.; Tsuji, K.; Shibuya, K.; Kawai, A. J. Phys. Chem. A 2015, 119, 8261-8268. |