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内容記述 |
中皮腫は中皮細胞から発生する悪性腫瘍で、80〜85%が胸膜中皮から発生する。中皮腫の多くはアスベストのばく露と深く関与しており、アスベストのばく露から20〜50年後に発症する。日本では、2004年に全てのアスベストの使用が禁止されるまで、建材をはじめとする多くの用途で使用されてきた。そのため、中皮腫の発生ピークは2030年頃、罹患者数は年間3,000人と予測されている。最近では、大規模な地震災害の後のアスベスト飛散ばく露の影響で患者の増加が懸念されている。初期の中皮腫は、症状が乏しいため、患者の約7割が進行した状態で診断される。 中皮腫は胸膜に沿ってびまん性に進展することが多く、外科的治療や一般的な放射線治療は困難である。現在のところ、ペメトレキセドとシスプラチンを組み合わせた化学療法が中心に行われているが、5年生存率は8%程度と十分な治療効果は得られていない。標的アイソトープ治療(TRT)は、殺細胞効果の高い治療用RIで標識した薬剤を投与し、体内から放射線を照射する放射線療法である。胸腔内に広がる中皮腫に対してTRTは有効な治療法になる可能性がある。実際、中皮腫皮下腫瘍モデルでの検討で、悪性度の高い肉腫型の中皮腫にも高頻度に発現している膜タンパク質ポドプラニンを標的分子としたTRTの治療効果が得られ、潜在性が示された[1,2]。 本研究では、より臨床に即した同所移植モデルマウスでの治療効果評価と投与ルートによる体内動体や被ばく線量の違いを検証した。β線放出核種イットリウム90(90Y)およびα線放出核種アクチニウム225(225Ac)を標識した抗ポドプラニン抗体NZ-16を投与すると、90Y、225Acとも顕著な抗腫瘍効果が得られた。放射性標識NZ-16の投与により、一時的な体減少が観察されたが、標識抗体投与に関連した死亡や正常組織への不可逆的な毒性は観察されなかった。また、標識薬剤を胸腔内投与すると、静脈投与に比べて正常組織への被ばく線量が低減でき、かつ腫瘍への薬剤集積が高いことが明らかになった。これらのとこから、抗ポドプラニン抗体NZ-16の胸腔内投与によるTRTは中皮腫に対して、有効かつ安全な治療法となることが示唆された。[1] Sudo H, et al. Cancer Sci. 2019; 110(5):1653-1664.[2] Sudo H, et al. Cells 2021; 10(10):2503 |