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日本の原発周辺住民の潜在的放射線リスク研究
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Item type | 一般雑誌記事 / Article(1) | |||||
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公開日 | 2005-05-17 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 日本の原発周辺住民の潜在的放射線リスク研究 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | article | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | metadata only access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_14cb | |||||
著者 |
吉本, 泰彦
× 吉本, 泰彦× 吉本 泰彦 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 今日の放射線防護の基本的な事柄は、放射線被ばくの原因となる有益な行為を不当に制限することなく、低線量・長期被ばくによる発がんと遺伝影響のリスクを減少させる合理的な対策である。放射線の遺伝影響を示す証拠はヒトではまだ得られていない。放射線ががんの原因となることを示す必要はもはやなく、むしろ人々の被ばく実態と総括的な健康リスクに関する直接的な疫学情報を提供し、その関係をより明快に示す必要性に迫られている。この新たな観点から我々は日本の原発周辺住民の潜在的放射線リスク研究を行うことにチャレンジしてきた。 原発事故に関しては、何が深刻な問題で何がそうでないか可能な限り適切に判断するための恒常的な情報収集が重要である。1954年のビキニ環礁核実験の重度のフォールアウトに被ばくした23人の日本の漁夫で放射線急性障害が見られた。しかし、1986年のチェルノブイリ原発事故で避難した人々約116,000人には急性影響は見られなかったと言われている。一方、この事故時に131Iに汚染された生乳を摂取した若年者(特に乳児)で甲状腺がんの過剰リスクが事故約4年経過した頃から現在でも見られている。甲状腺疾患以外では原発事故のフォールアウトによる一般公衆の後影響を示す明確な証拠はまだない。原発事故後、考えられる最大線量が急性障害発生の必要線量より低いと思われるのに放射線急性障害の訴えにその操業者あるいは規制当局である政府機関はしばしば直面する。これらは心理学的ストレス(過去には蔑む用語として放射線恐怖症が用いられた)か、事故の関係機関から補償を勝ち得るための努力の産物と考えられている。また、情報を限定したり、抑制したりすることは信頼や公衆の確信を損なうにすぎない。チェルノブイリ原発事故に関する旧ソ連研究者との研究協力や過去の原発事故の文献的レビューを通して原発事故による後影響を総括する努力が今後も必要である。また、131Iは短寿命の放射性核種であり迅速で効果的な放射線被ばく低減化対策も検討されなければならない。 日本の原発の平常の操業時は、原発周辺の環境放射線モニタリングはオンサイト(事業者)とオフサイト(地方自治体)で実施され、原発からの放射性廃棄物による周辺住民の健康影響は日常生活で無視できるほど大変小さい。国際放射線防護委員会(ICRP)等の国際的な放射線防護体系に準じた責任ある原発利用がなされていると公衆が確信し、不安なく満足できる、誤解のない低線量・低線量率域の放射線リスクの情報提供が重要である。これは現在も簡単でないし、過去には不十分な科学的知見のため意図せずして信頼や公衆の確信を損なうことがあったであろう。1983年に英国のテレビでセラフィールド核再処理施設周辺の小児白血病の集積に関する懸念が放映された。その後、原子力施設周辺の若年者の白血病リスクを解析する疫学研究がいくつかの国で行われた。1994年は日本の一部マスコミに敦賀原発周辺の1970〜1993年の悪性リンパ腫死亡率の増加を示唆する記事が書かれた。日本の原発所在地区の白血病・悪性リンパ腫死亡率の生態学的研究結果の解釈上の対立は公衆の確信を損なう扇動的な雑誌記事へと発展した(1999年)。これらの懸念はチェルノブイリ原発事故後から現在までの経験、フォールアウトによる一般公衆の健康影響は白血病より甲状腺がんの増加が顕著であることと対比されるべきである。また、過去に大気圏核実験が多数行われて以来次世代への放射線の遺伝影響が、ヒト集団で証拠がないまま、過度に懸念され続けてきた。韓国では無脳症の出産を2回経験した母親の訴えによって原発からの放射線漏れを懸念させる事態となった(1989年)。米国では原発の原子炉の閉鎖後見られた乳児死亡率の低下は原発の原子炉閉鎖と関連付ける報告書もあった(2000年)。日本では一般的に乳児死亡率は減少している。 チェルノブイリ原発事故はネバダ大気圏核実験(1951〜1962年)のフォールアウトによる米国一般公衆の健康リスク問題にも影響を与えている。原発事故時であっても多くの公衆が遭遇する放射線リスクは小さく、また小さいほどその不確実性は大きい。こうした不確実性への懸念は、放射線事故時の迅速で効果的な放射線被ばく低減化対策の実施と平常時においての一般的に健全な放射線管理が日常生活で維持・改善されているとの信頼と公衆の確信によって小さくできるであろう。残念ながら、日本の診断X線の被ばく線量が他の先進国に比べ未だに高く、臨界事故や放射線治療の過剰被ばく事故が日本で近年見られた。 \n1.Edited by I.A. Gusev et al. Second Edition, Medical management of radiation accidents. CRC Press, 2001. 2.E.S. Gilbert et al. Health effects from fallout. Health Physics 82(5): 726-735, 2002. 3.F.O. Hoffman et al. A perspective on public concerns about exposure to fallout from the production and testing of nuclear weapons. Health Physics 82(5): 736-748, 2002. 4.吉本泰彦、吉永信治。2.原発周辺住民の潜在的放射線リスク研究。In岸玲子監修、職業・環境がんの疫学−低レベル曝露でのリスク評価、篠原出版新社、東京、2003. 5.Y. Yoshimoto, S. Yoshinaga et al. Research on potential radiation risks in areas with nuclear power plants in Japan: leukemia and malignant lymphoma mortality between 1972 and 1997 in 100 selected municipalities. J. Radiol. Prot. 24: 343-368, 2004. |
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書誌情報 |
NEWS CAST 号 81, p. 004-004, 発行日 2005-05 |