量研学術機関リポジトリ「QST-Repository」は、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構に所属する職員等が生み出した学術成果(学会誌発表論文、学会発表、研究開発報告書、特許等)を集積しインターネット上で広く公開するサービスです。 Welcome to QST-Repository where we accumulates and discloses the academic research results(Journal Publications, Conference presentation, Research and Development Report, Patent, etc.) of the members of National Institutes for Quantum Science and Technology.
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放射線による生体への作用は、これまで広島・長崎の原爆をはじめとする高線量・高線量率における影響を低線量域に外挿して「放射線は微量であっても生体に害をもたらす」という考え方が受け入れられて来た。その一方で現実的なリスク評価を考えた場合、低線量率かつ長期にわたる照射条件下での影響評価は不可欠であると考えられる。しかし実際には、低線量率での生体応答は、高線量率のそれと比較して僅かであることから、有意な現象の抽出が困難で全体像はまだ良くわかっていない。近年、マイクロアレイの普及により高線量率で短時間照射の解析は行われているが、自然放射線の数万倍以上の線量率である。そこで、我々は昨年度、自然放射線の20倍〜8000倍の線量率で485日間飼育したマウスの腎臓での遺伝子発現プロファイルを解析し、もっとも高線量率で酸化的リン酸化経路が活性化している可能性を示唆した。しかしながら、低線量率照射群で変動した遺伝子個々のアノテーションからは共通の応答経路を見出すことができなかった。そこで本年度は、解析実績のあるSHAFT(https://ebraille.med.kobe-u.ac.jp/SHAFT/)のアルゴリズム(Phy Gen 30, 102-110, 2007)を採用したマイクロアレイデータ解析プログラムboomerangを利用して、放射線影響研究への応用を試みた。SHAFTとは、「1)遺伝子発現パターンによるクラスタリング、2)遺伝子群の転写制御領域に存在する、転写因子が結合可能なコンセンサス配列の検索、3)コンセンサス配列の出現位置情報と頻度をファイル、4)遺伝子群の転写制御領域に共通のコンセンサス配列から候補となる転写因子を抽出。」というアルゴリズムである。大量データを生かした研究方法へパラダイムシフトし、実験のみでは困難な極低線量率での僅かな生体応答の解析で、これまで明らかにされていないp53経路の活性化の可能性が示唆された。本研究は青森県からの受託事業より得られた成果の一部である。